能力を失った聖女は用済みですか?
ガラティアはストンと地に降りて、空いていた椅子に腰かけた。

『妾達がロランに入れぬのは、奴の結界のせいじゃ。国の中心に巣くい、結界を張り、精霊を追い出す……すると、作物がだんだん弱り育たなくなる。そうして生まれる民の不安や恐怖を糧に、結界はどんどん強固になるのじゃ』

「それで……最後は……」

『ニーベルンの昔話のようになるのう……人の負の心を粗方食べつくしたら、ロランは廃墟になり、やがて荒野となるだろう』

一旦話が途絶えたところで、私はガラティアの語ったことを皆に伝えた。
彼らは、各々が難しい顔をしながら何かを考え込み、部屋の中を静けさが覆う。
精霊が入れぬ邪神の結界。
ロランの現状が、滅亡の一歩手前なのだとしたら、結界はかなり強く固くなっているのだろう。
でも、ガラティアほどの地母神でも入れないのだろうか?

「ガラティア様、結界を破れないんですか?」

ふと呟くと、カイエン達が顔をあげた。
偉そうな態度で座っていたガラティアは、私の言葉を聞くと途端にムッとした。

『良く考えてみよ。結界を壊せるならとっくにやっておると思わんか?』

「あ……そうですね。ということは、ガラティア様にも出来ないことがある、と?」

『……お主……虫も殺さぬ顔をして、ガンガン妾の心を抉ってくるのう?』

ガラティアは不満げに私を見た。
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