能力を失った聖女は用済みですか?
納得しながらも、心配するシスル。
そんな彼に、カイエンは力強く言った。

「ああ。必ず務めを果たし帰ってくることを約束する」

「その約束を信じます。それでは、イズール達に荷馬車を用意させ、出来上がったルナシータを積み込ませましょう。倉庫に保管してあるのですよね?ルナさん」

「は、はい!持っていく物は全て倉庫に置いてあります」

「ふむ。今から積込をして、皆の支度を整えていると……早くともロランに向かうのは、明日の朝になりそうですね」

宰相モードに切り替わったシスルは、テキパキと頭を働かせた。
アミードに負けず劣らず、シスルも頭が切れる。
内乱の処理や、干ばつの復興など、シスルがいなければ乗り越えられなかったことも多い。
彼が残ってくれるなら、シャンバラの国内の心配はなさそうだ。

「では、明日の早朝、全員正門前に集合!」

王者らしく叫んだカイエンは、次に小声で囁いた。

「……ルナ?少しいいか?」

「あ、はい。大丈夫です」

「うん……おい、お前達は仕事に戻れ」

カイエンの視線の先を辿ると、シスルとアミードが含み笑いでこちらを見ている。
彼らがそっと部屋を出ていくと、カイエンはこちらに歩み寄ってきた。
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