能力を失った聖女は用済みですか?
ガラティアが指差す方には、寝台があった。
見事な造りの寝台には、ぶあついカーテンが掛かっている。
歩みより恐る恐るカーテンをよけると、広い寝台の中央に、ロランの国王陛下が横たわっていた。
見事だった金髪は白髪に変わり、顔色も悪く、目視だけでは生死の判断がつかなかった。

「……陛下?大丈夫ですか?」

軽く揺すって様子を見ていたら、カイエンがやってきて王を抱き起こした。

「ロラン王!しっかりしろ!」

声をかけながら、心音を確かめると、カイエンは少しほっとした表情をした。
とりあえず生きている、そのことに安堵していると、王がうっすら目を開けた。

「うぅ……」

「陛下!」

「ロラン王!」

呼び掛けが聞こえたのか、王は視線を彷徨わせる。
ぼんやりと定まらない視点は、まずカイエンを捉え、次に私を捉えた。

「聖……女……か……」

「そうです」

私を確認すると、王はカイエンの手を借りて、きちんと半身を起こした。

「なんとなく、覚えている。こんなことになった経緯も……そして、そなたにした仕打ちも……」

「……そうですか」

ロラン王の呟きを聞いて、私の胸中にあの日の出来事が甦る。
逃げるように去った時の、辛くて悲しかった記憶。
どこにも居場所がなくなった喪失感や、必要とされないと知った時の絶望。
全てが甦り私は俯いた。
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