能力を失った聖女は用済みですか?
「あの……私、何かしました?」

「いや。お前のせいじゃない。オレの落ち度だ」

「は、はぁ……」

「とにかく、側室や他の妃はこれから増えることはない。オレの妃は……後にも先にもお前だけだ」

カイエンは真っ直ぐに私を見た。
あれ?お嫁さん……もう増えないんだ……。
そう思った私は、自分がとてもほっとしていることに驚き、同時に本当の気持ちに気付いてしまった。
なんだかんだで否定し続けてきたけれど、もうどう考えても、私、カイエンのこと……。

「そ、そうなんですか……じゃあ、私、もっともっと、頑張らないといけませんね!」

気恥ずかしくなって、思わず声が上擦った。
でも、そんな私をカイエンはとても優しい目をして見つめた。

「そんなに気負う必要はない。出来る範囲でいいんだ。出来ないことはみんなで助け合って乗り越える、シャンバラはそんな国だろ?」

今まさに昇る朝日を背に、シャンバラの王は太陽のような微笑みを浮かべた。
神々しくもあるその姿を目にし、私は思う。
例えこの先、何が起きようとも、カイエンの隣で……シャンバラの皆と生きられるなら、何も怖くはない。
この国で出会えた全ての人、全ての出来事に感謝しながら、私はカイエンに微笑み返した。


~END~
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