能力を失った聖女は用済みですか?
私が腕を掴まれ祭壇から引きずり下ろされると、突如白いものが空から舞い降りた。
それは聖獣ディアーハ。
真っ白な大型の虎で、なんと翼がはえている。
私が召喚されたその日、天から舞い降りた守護聖獣だ。
「ディアーハ!」
名前を呼ぶとディアーハは、大きな翼で神官を威嚇し、私を背に乗せた。
「おい!何をしておる!女はどうでもいいが、聖獣は逃すな!それは我が国のものだぞ」
王が叫ぶと、神官の一人がいさめるように言った。
「しかし、陛下!聖獣は聖女の守り神。たとえ力を失っていても聖女にしか従いませぬ」
「……ふんっ。ならば、新しい聖女が誕生すれば、新しい聖獣が産まれるのだな?」
「もちろんです。聖女降臨とともに、産まれる筈でございます」
王はディアーハに乗った私を見上げ睨んだ。
「役立たずは去れ。アイーシャが気分を害する前に消え失せろ」
……勝手に呼んでおいて、去れなんて。
少し前は、こんな人じゃなかった。
優しい笑顔の気さくな方だったのに。
溺愛する王妃を亡くしてから、王は人が変わってしまった。
ふらっとやってきた占い師のアイーシャに依存し、何もかも彼女の言うことを信じた。
そして、アイーシャの言うままに彼女を妃に迎えたのである。
「陛下……さようなら!」
私が叫ぶと、ディアーハが勢いよく飛翔した。
祭壇はぐんぐん遠くなり、王も神官も豆粒のようになる。
5年間、健やかなれと祈ったロランに、もう私は必要ない。
すぐに新しい聖女が来て、彼女が祭事を行うのだ。
住み慣れたロランを去るのはとても不安だった。
だって私には……この世界で行く場所なんて、どこにもないのだから。
それは聖獣ディアーハ。
真っ白な大型の虎で、なんと翼がはえている。
私が召喚されたその日、天から舞い降りた守護聖獣だ。
「ディアーハ!」
名前を呼ぶとディアーハは、大きな翼で神官を威嚇し、私を背に乗せた。
「おい!何をしておる!女はどうでもいいが、聖獣は逃すな!それは我が国のものだぞ」
王が叫ぶと、神官の一人がいさめるように言った。
「しかし、陛下!聖獣は聖女の守り神。たとえ力を失っていても聖女にしか従いませぬ」
「……ふんっ。ならば、新しい聖女が誕生すれば、新しい聖獣が産まれるのだな?」
「もちろんです。聖女降臨とともに、産まれる筈でございます」
王はディアーハに乗った私を見上げ睨んだ。
「役立たずは去れ。アイーシャが気分を害する前に消え失せろ」
……勝手に呼んでおいて、去れなんて。
少し前は、こんな人じゃなかった。
優しい笑顔の気さくな方だったのに。
溺愛する王妃を亡くしてから、王は人が変わってしまった。
ふらっとやってきた占い師のアイーシャに依存し、何もかも彼女の言うことを信じた。
そして、アイーシャの言うままに彼女を妃に迎えたのである。
「陛下……さようなら!」
私が叫ぶと、ディアーハが勢いよく飛翔した。
祭壇はぐんぐん遠くなり、王も神官も豆粒のようになる。
5年間、健やかなれと祈ったロランに、もう私は必要ない。
すぐに新しい聖女が来て、彼女が祭事を行うのだ。
住み慣れたロランを去るのはとても不安だった。
だって私には……この世界で行く場所なんて、どこにもないのだから。