能力を失った聖女は用済みですか?
王宮の正門を抜け、緩やかな坂を馬で駆け上ると、鉄で出来た重厚な門がパックリと口を開けていた。
その下を抜けると大きな広間に出る。
吹き抜けになっている広間は、王宮の中なのに公園のように見えた。

「さぁ、着いた」

カイエンは馬から降り、次いで私をおろした。
補給部隊の半分は、馬を引き連れて厩舎に向かい、残りは荷車を広間の角に寄せる。
すると、どこからか子供がわっと押し寄せた。

「カイエンさまぁー!おかえりなさい!」

「おかえりなさーい」

男の子や女の子、下は3歳くらいから上は13歳くらいまでの子供たちは、カイエン目掛けてやって来た。

「おう。ただいま!みんな土産があるぞ!荷車に行って好きなものを取るといい」

「わぁーい!」

カイエンの言葉に、子供たちが叫び、一斉に荷車に群がる。
荷車にはシスルが待機していて、小さい子から順番に乗せ欲しい物を物色させているようだ。

「お土産もあるんですねぇ」

私は呟いた。

「うん。食べ物を持って行った代わりにな、皆、工芸品をくれたりするんだ。履き物や刺繍、小物入れや腕輪なんかを」

「なるほど。シャンバラの人は手先が器用なんでしたね」

「よく知ってるな」

カイエンは誇らしげに微笑んだ。
前に風の精霊が、シャンバラの履き物の話をしていたのを思い出した。
革製で軽くて丈夫。
それだけじゃなく、装飾もお洒落でかわいいのだと教えてくれたっけ。
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