能力を失った聖女は用済みですか?
シャンバラの日差しは、眩しく強く……痛い。

差し込む日差しが痛くて飛び起きた私は、軽く身支度を整えて広間へと急いだ。

広間では、朝食が配られているようで、受け取った者から順次好きな場所で食べている。
私が姿を現すと、いち早く気付いたカイエンが、ゆっくりと近付いて来た。

「おはよう。眠れたか?」

「はい。ぐっすりです」

カイエンから麻袋に入れられた朝食を渡され、すぐ側の長椅子に座る。
麻袋の中には、拳大のライ麦パンと直径3センチくらいの葡萄が一粒入っていた。

「少なくて悪いな……」

「いいえ。パンと果物があるなら十分だと思いますよ?これだけの被害にあって、ちゃんと食べ物が確保出来ているんですから、すごいです」

「姉上の嫁ぎ先、アッサラームからの助けもあるからな。シャンバラだけではどうにもならない。だが必ず復興し、また元の豊かな国にするつもりだ」

「微力ながら、私もがんばります!」

そう言うと、カイエンは嬉しそうに何度も頷いた。
がんばる為にはまず食事!
食べて腹ごしらえをしなくては体も頭も働かない。
私はライ麦パンを一口食べた。
ライ麦は密度が高くて固いけど、腹持ちがとても良い。
その上、栄養価も高くて、このような状況下に適したパンである。
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