能力を失った聖女は用済みですか?
「まぁどっちにしろロランは出るべきだった」

鼻先をこちらに向けながら、ディアーハは言った。

「どうして?何かがおかしいから?」

「人が傲ると、地脈が乱れる。地脈が乱れると、悪意が寄ってくる。これは人の世の理だ」

「ディアーハ、ちょっと難しいわ」

彼の言うことは、抽象的で理解がしづらい。
ただわかるのは「良くない状況」だということだ。

「まぁ、見ていろ、今にわかる……お!あそこに小さな集落があるぞ?降りるか?」

「え?ほんと?」

見下ろすと、村のような所から細い煙が立ち上っている。
人がいる証拠だ。

「降りよう!シャンバラの状況も聞きたいし、何か出来ることがあるかもしれない」

「了解だ、少し揺れるぜ?掴まってろよ!」

言うや否や、ディアーハは滑降を開始した。
頬に当たる風が激しくなり、重力がかかる。
そうして、あっという間に集落脇に降り立つと、ディアーハは屈んで私を降ろした。
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