能力を失った聖女は用済みですか?
祝宴の間の扉の前で一つ深呼吸すると、私はそっと入室した。
初めて入る「祝宴の間」は、一階の広間と同じくらいの広さだったけど、造りやその調度品などに華やかさがある。
シャンバラの民ならば誰でも入れる一階広間は、賑やかで活気に溢れ和やかだ。
でも、祝宴の間は王族などを招く用途で使われるせいか、なんとなく厳かな気配がする。
部屋全体から感じる「圧」が、シャンバラの歴史そのものである気がした。
「こちらです!待ってましたよ!」
シャル王太子が私に向かって呼び掛けた。
だだっ広い部屋の真ん中にはフカフカな赤いソファーが置かれ、そこにカイエンとシャル、シスルと……王太子の側近さんが、ニコニコと笑いこちらを見ている。
そんなに注目されると、なんだか緊張する……。
私は辿々しく4人に近付いて一礼した。
「あなたがルナさんですね!苗と土壌の研究者であり、料理にも精通しているという!」
「は、はいっ!私がルナです。えっと……お呼びだと聞いたんですが……」
笑顔のシャルに答えながら、私はあることを考えていた。
人タラシ王カイエン。
甥っ子のシャルも間違いなくそのDNAを受け継いでいる、と。
爽やかな笑顔で人の緊張を解き、悪意がないのを見せ、すっと懐に入り込む。
実際、悪意や悪気はないと思うから、もうこれは天然の人タラシの家系である。
シャルは手招きで私を呼ぶと、眼前の椅子に座らせた。
そして、身を乗り出して言う。
「いやぁ、堪能しました。シャンバラの新種イモ!とても美味しかったです、ありがとう!」
「いえ、そんな。喜んで頂けて良かったです」
「大変だったのではないですか?材料が同じもので何品も作るのは」
「そうでもありません。味を変える工夫をしたくらいですから」
さも余裕で答えたけど、本当は死ぬほど頭を悩ませた。
使える材料が「イモ」しかないのだ。
調理法や調味料で味変するとしても、やはり「イモ」の自己主張はなくならない。
いっそのこと、全部蒸しイモにして、お好きな調味料でどうぞー?てことにしようかとも考えたくらいだ。
初めて入る「祝宴の間」は、一階の広間と同じくらいの広さだったけど、造りやその調度品などに華やかさがある。
シャンバラの民ならば誰でも入れる一階広間は、賑やかで活気に溢れ和やかだ。
でも、祝宴の間は王族などを招く用途で使われるせいか、なんとなく厳かな気配がする。
部屋全体から感じる「圧」が、シャンバラの歴史そのものである気がした。
「こちらです!待ってましたよ!」
シャル王太子が私に向かって呼び掛けた。
だだっ広い部屋の真ん中にはフカフカな赤いソファーが置かれ、そこにカイエンとシャル、シスルと……王太子の側近さんが、ニコニコと笑いこちらを見ている。
そんなに注目されると、なんだか緊張する……。
私は辿々しく4人に近付いて一礼した。
「あなたがルナさんですね!苗と土壌の研究者であり、料理にも精通しているという!」
「は、はいっ!私がルナです。えっと……お呼びだと聞いたんですが……」
笑顔のシャルに答えながら、私はあることを考えていた。
人タラシ王カイエン。
甥っ子のシャルも間違いなくそのDNAを受け継いでいる、と。
爽やかな笑顔で人の緊張を解き、悪意がないのを見せ、すっと懐に入り込む。
実際、悪意や悪気はないと思うから、もうこれは天然の人タラシの家系である。
シャルは手招きで私を呼ぶと、眼前の椅子に座らせた。
そして、身を乗り出して言う。
「いやぁ、堪能しました。シャンバラの新種イモ!とても美味しかったです、ありがとう!」
「いえ、そんな。喜んで頂けて良かったです」
「大変だったのではないですか?材料が同じもので何品も作るのは」
「そうでもありません。味を変える工夫をしたくらいですから」
さも余裕で答えたけど、本当は死ぬほど頭を悩ませた。
使える材料が「イモ」しかないのだ。
調理法や調味料で味変するとしても、やはり「イモ」の自己主張はなくならない。
いっそのこと、全部蒸しイモにして、お好きな調味料でどうぞー?てことにしようかとも考えたくらいだ。