能力を失った聖女は用済みですか?
「お菓子を沢山作って他国に売り外貨を稼ぎます。稼いだ外貨をシャンバラのために役立てれば、復興も早くできる。悪い話ではないかと」

「えっ!?あの……それって、ルナシータを売るってことですよね。でも……」

売れるんですか!?
と、私は叫びたかった。
何の変哲もない、芋けんぴ。
確かに普通のイモよりは、格段に美味しいけど、果てして本当に売れるのだろうか。
需要と供給が成り立っての商売なのだから。

「ルナさんはこのお菓子……ルナシータが売れないかも、と考えていますか?」

浮かない顔をした私にシャルが問いかける。

「正直に言うと、はい。イモはどこの国にもあるものです。特別珍しくもないので」

「なるほど。そう考えるのもわかります。では、アミード、少し詳しく説明してあげてくれるかい」

「はい殿下」

インテリ側近の名前はアミードと言うらしい。
アミードは恭しく言うと、次に私を正面に捉えた。

「遅ればせながら、初めまして。私、アッサラームの外交や財務を担当しておりますアミード・デュケーンと申します」

「あ、はい。ご丁寧にどうも。ルナです」

「単刀直入にいいますと、このルナシータなるお菓子、かなりの需要が見込めます」

……単刀直入すぎて、意味がわからない。
とは言えず、私はアミードの言葉を待つ。

「まず、保存が利くこと。各国を渡り歩く商隊や、兵士の保存食は、今まで保存は利いても味がいまいちな物が多かったのです。その点、ルナシータは旨い!」

「は、はぁ……」

「更に糖分で疲れを癒すことも出来て、軍隊、兵士の遠方訓練にも最適。そして、甘いもの好きな婦女子にも人気が出るでしょう。新種の巨大イモという、宣伝効果も抜群。これは間違いなく売れます」

アミードは言い切った。
その言葉には、不思議と説得力がある。
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