能力を失った聖女は用済みですか?
「地面が乾いてるわね……」

遥か上空から見た大地の状態と、集落の大地の状態は殆ど変わらなかった。
どこも全く水分がなく、痩せていて固い。
雨が全く降らないのが原因か、地下の湧水ですら枯渇したのか。
どちらにしろ、これは深刻すぎる事態だ。

「おい……あんた……だれだ?」

集落の中から声が聞こえ、私は振り向いた。
そこにいたのは、ガリガリに痩せた老人の男で、歩くのも辛いのか、杖で体を支えていた。

「あの、私はルナと申します。シャンバラの現状を知りたく、ここにやって来ました」

「なんと物好きな……こんな辺鄙な所にくる人間が、未だにいるとはな。まぁ、そこではなんだ。集落内に入りなさい」

老人は柵の向こうにいる私を、手招きした。

「はい。ありがとうございます」

(俺様は暫く身を隠している。用があれば呼べ)

ディアーハは、私の頭の中で囁くと、気配を消した。
彼ら聖獣は、本来は繊細で、人に姿を見られるのを嫌い、人の気配に敏感だ。
おそらく老人が来る前には姿を消し、見られてはいないと思う。
見られていれば、翼の生えた真っ白な虎を見て、老人が驚かないはずがない。
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