能力を失った聖女は用済みですか?
柵を潜り中に入ると、廃墟のような家が何軒かあり、広場には埃っぽい風が舞い上がっていた。
奥に向かって歩いていく老人の後ろを、私はひたすら付いていく。
その道すがらすれ違ったのは、たった一人。
それも老人である。
「ここだよ。狭いけど入んな」
「ありがとうございます」
招かれた家の中には、だれか家族がいた形跡があった。
使いかけの食器にはうっすらと埃が積り、老人のものではない羽織が綺麗に畳んで置かれてある。
だれかがいたけど、最近どこかへ出掛けた、そんな感じだ。
「あの……ここには、お一人で住んでるんですか?」
「……今はな……ちょっと前は娘と娘婿がいて、その孫娘と一緒だったよ」
「その方達は……どこへ?」
尋ねると、老人は遠い目をした。
「……大干ばつで、この辺りは作物が全く採れなくなってな。かろうじて開墾出来る土地を探して出ていったよ」
「そうですか……でも、どうして一緒に行かなかったんですか?」
「……ワシはこの集落でたった一人の医者なんだ。残った者は老人ばかり。皆どこか体を悪くしとるから、離れるわけにはいかんのだ。それにな、週に一回、都から補給部隊が来るのでそう不便ではない」
「補給部隊!?それはシャンバラの……国の配給ですか?」
驚いて私は身を乗り出した。
「そうさ。シャンバラの国王陛下、カイエン様が先頭に立って動いておられるのだ」
老人はありがたそうに手を合わせた。
奥に向かって歩いていく老人の後ろを、私はひたすら付いていく。
その道すがらすれ違ったのは、たった一人。
それも老人である。
「ここだよ。狭いけど入んな」
「ありがとうございます」
招かれた家の中には、だれか家族がいた形跡があった。
使いかけの食器にはうっすらと埃が積り、老人のものではない羽織が綺麗に畳んで置かれてある。
だれかがいたけど、最近どこかへ出掛けた、そんな感じだ。
「あの……ここには、お一人で住んでるんですか?」
「……今はな……ちょっと前は娘と娘婿がいて、その孫娘と一緒だったよ」
「その方達は……どこへ?」
尋ねると、老人は遠い目をした。
「……大干ばつで、この辺りは作物が全く採れなくなってな。かろうじて開墾出来る土地を探して出ていったよ」
「そうですか……でも、どうして一緒に行かなかったんですか?」
「……ワシはこの集落でたった一人の医者なんだ。残った者は老人ばかり。皆どこか体を悪くしとるから、離れるわけにはいかんのだ。それにな、週に一回、都から補給部隊が来るのでそう不便ではない」
「補給部隊!?それはシャンバラの……国の配給ですか?」
驚いて私は身を乗り出した。
「そうさ。シャンバラの国王陛下、カイエン様が先頭に立って動いておられるのだ」
老人はありがたそうに手を合わせた。