チョコなんてあげないっ!


「つーか、お前が本命チョコなんて本気?
琳のくせに……」


しばらくバレンタインのレシピ本を見ていた広斗の目線が、今度はあたしのほうに移った。


くっきりと綺麗な二重の瞳に見つめられて、あたしは思わずドキッとする。


「誰だか知らないけど、琳から本命チョコをもらう奴も可哀想だよな。
だってお前、料理できねぇじゃん。

中学のときの家庭科の調理実習でも、琳だけ失敗して、真っ黒に焦がしてさ」


当時を思い出したのか、くくっと笑う広斗。


「琳のことだからやっても失敗するだろうし、手作りなんてやめとけ。どうせまたゴミになるだけだろ。
ははっ、そんなのやるだけムダムダ!」


人のことを笑って、勝手にできないって決めつけて。

あたしが黙ってるからって、さっきから色々と言いたいこと言いやがって。


そんな広斗に段々と腹が立ってきて、あたしの怒りはついに頂点に達した。



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