チョコなんてあげないっ!
「あのねー。さっきから一体何様なわけ?
あたしが手作りしようが、誰にチョコをあげようが、あたしの勝手でしょ!?
言っておくけど、あたしの好きな人は広斗じゃないから!
それに、今年のバレンタインはあたし、本命チョコだけを渡すって決めたから。
だからあんたに、チョコなんてあげないっ!」
腹が立ったあたしは、思いがけずそんなことを口走っていた。
しまった。と思ったが、時すでに遅し。
「あっそ。別に俺もお前からのチョコなんていらねぇよ。まあ、せいぜい頑張れば?」
バンッと机の上に叩きつけるようにレシピ本を置いた広斗は、スタスタと足早に歩いていってしまった。