時計のカルテット~オタクがイケメン侍らせて何が悪い~
「仕事ととさぁ。

宿探してるなら僕の家これば?

僕も居候している身だから、家主に聞かなきゃ分かんないけどさぁ」

何だろう。

善意で提案してくれているんだろうけど、その微笑みが余計に怖いし、

掴んでる手が先程よりも強く握っている気が。。


「え?でもぉ。家主さんにも伺わなければいけないですし、悪いですよ」


嬉しい、嬉しいがタダほど怖いものはないはず。


「あっ大丈夫だよ。

僕のタイプでは、まっっっっったく無いから。

貞操がとか、バカな考えは辞めなよ」

あはははは。

奢ってもらった身じゃなければ、持ちうる語彙で罵って、走って逃げるのになぁ。


「お嬢ちゃん。お嬢ちゃん。」

現実逃避をしていた私に

「あっはい。」

「こう、あんちゃんも言ってるようだし、お言葉に甘えちゃいなよ。」

「いやぁ。でも初対面ですし」

目線をそらすと、ユチーフさんと目が合い、名乗ったんだからいいでしょ的な目をされた。解せない。

ユチーフさんに利点があるように感じないんだが。

「それにな、あんちゃん。オルフェスさんとこの居候だろ」

ユチーフさんを見ると

「あっはい。知ってたんですか」おちゃらけながら答えていた。

さっきの雰囲気どこいった。

「身元もハッキリしてるし。大丈夫だ。
なんかあったら頼ってこい。最初に声かけた縁もあるしな」

え?ごめんなさい。

人一人殺してそうな人とか思ってしまって。心の中で懺悔します。

店主こと、グラサンもそう言ってるし、

「あの。ついて行っても宜しいでしょうか」頼むことにしよう。

「最初から言ってるじゃん。おいでって、ほら店主に挨拶して行くよ。 日が暮れちゃうでしょ」 

そう言い、やっとこさ、手を離した。

「ありがとうございます。行ってきます」

グラサンは少し目を見開き、

「おう。気いつけてな」と言って手を振ってくれた。

私は手を振り返し、少し先を歩いている彼について行った。
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