アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
お出掛け
次にアリーシャが目を覚ますと、そこは見慣れぬ部屋であった。
(そっか、オルキデア様の屋敷に来て、そのオルキデア様の部屋で寝たんだっけ……)
昨日、軍部から移送ーーではなく、引っ越しをしたアリーシャは、仮初めの夫となったオルキデアの屋敷にやって来た。
初めてオルキデアと離れて、不安で寂しくて、オルキデアの部屋にやってきたアリーシャは、オルキデアの昔話を聞いた後に、そのまま一緒に寝たのだった。
一緒に寝たといっても、オルキデアの宣言通りに、ただ添い寝しただけで、着衣に乱れもなければ、身体に違和感もなかった。
アリーシャはベッドから出ると、カーテンを開けて外を見る。
昨夜の強風が嘘のように、外は綺麗な秋晴れであった。
(庭の花、大丈夫かな。後で見に行こうかな)
不意に、昨夜、オルキデアに抱きしめられた際の感触を思い出して、自分の身体を抱きしめる。
(オルキデア様にも苦手なものがあったなんて)
アリーシャと違って、なんでも出来て、弱点なんて無さそうなオルキデア。
そんなオルキデアにも、「寒さ」という弱点を持っていた。
意外と言えば意外だったが、でも国は違っても、やはりオルキデアも同じ人間なのだと、身近に感じられたのだった。
窓から離れて、着替えをしに部屋に戻ろうとしたところで、部屋の主の姿が無いことに気づく。
その瞬間に、顔から血の気が引いたのだった。
(まさか、寝過ごした……?)
昨夜が夢ではなかったことは、今度こそ身体に残る熱からわかる。
アリーシャは部屋を飛び出すと、廊下を駆けて、オルキデアを探しに行ったのだった。
居間、書斎、他の客間と順に確認したアリーシャは、とうとう一階の厨房までやってきた。
バンッと扉を開けると、そこにようやく目的の人物がいたのだった。
「もう起きたのか」
白色のシャツに、黒のズボン姿、首元の後ろでダークブラウンの髪を纏めて、今まで見た中でもかなりラフな格好をしたオルキデアは、ポットを片手に不思議そうな顔をする。
「どうした? そんなに血相を変えて」
「あ……の……。寝過ごしたのかと思って……」
「まだ朝も早い時間だから大丈夫だ」
オルキデアの目線を辿ると、壁に掛かっている時計は、まだ九時前を指していた。
早い時間と言っても、軍部にいた頃よりは遅い起床時刻の気もするが……。
「熟睡しているようだったから、そのまま寝かせていたが……。起こした方が良かったか?」
「いえ、朝食の用意を……」
「それはさっき様子を見に来たマルテがやって帰った」
どうやら、アリーシャが寝ている間に、二人の様子を見に来たマルテが、朝食を用意してくれたらしい。
悪いことをしてしまったと、アリーシャは肩を落とす。
ポットのお湯をテーブルに置いてあったカップに注ぎながら、「そういえば」とオルキデアは思い出したように話し出す。
「やはり、昨夜の強風で庭の梯子が倒れていたらしい。マルテと一緒に様子を見に来たメイソン氏が言っていた」
「そうでしたか……」
お湯を注いだカップから、コーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
ポットを置いたオルキデアは、再びアリーシャに視線を向けてくる。
「で、いつまで寝間着姿でいるんだ?」
オルキデアに言われて身体を見下ろすと、自分がまだ寝間着のネグリジェ姿だったことに気づく。
羞恥で赤くなりながら、「これは、その……」とアリーシャは口ごもる。
「朝食は俺が用意するから、先に着替えて来い」
「ありがとうございます……」
「朝食が済んだら外に出掛ける。そのつもりでな」
「はい……。あれ、私も一緒に行っていいんですか?」
「当然だろう。君に必要なものでもあるのだからな」
そうして、オルキデアは小さく笑うとカップに口をつけたのだった。
(そっか、オルキデア様の屋敷に来て、そのオルキデア様の部屋で寝たんだっけ……)
昨日、軍部から移送ーーではなく、引っ越しをしたアリーシャは、仮初めの夫となったオルキデアの屋敷にやって来た。
初めてオルキデアと離れて、不安で寂しくて、オルキデアの部屋にやってきたアリーシャは、オルキデアの昔話を聞いた後に、そのまま一緒に寝たのだった。
一緒に寝たといっても、オルキデアの宣言通りに、ただ添い寝しただけで、着衣に乱れもなければ、身体に違和感もなかった。
アリーシャはベッドから出ると、カーテンを開けて外を見る。
昨夜の強風が嘘のように、外は綺麗な秋晴れであった。
(庭の花、大丈夫かな。後で見に行こうかな)
不意に、昨夜、オルキデアに抱きしめられた際の感触を思い出して、自分の身体を抱きしめる。
(オルキデア様にも苦手なものがあったなんて)
アリーシャと違って、なんでも出来て、弱点なんて無さそうなオルキデア。
そんなオルキデアにも、「寒さ」という弱点を持っていた。
意外と言えば意外だったが、でも国は違っても、やはりオルキデアも同じ人間なのだと、身近に感じられたのだった。
窓から離れて、着替えをしに部屋に戻ろうとしたところで、部屋の主の姿が無いことに気づく。
その瞬間に、顔から血の気が引いたのだった。
(まさか、寝過ごした……?)
昨夜が夢ではなかったことは、今度こそ身体に残る熱からわかる。
アリーシャは部屋を飛び出すと、廊下を駆けて、オルキデアを探しに行ったのだった。
居間、書斎、他の客間と順に確認したアリーシャは、とうとう一階の厨房までやってきた。
バンッと扉を開けると、そこにようやく目的の人物がいたのだった。
「もう起きたのか」
白色のシャツに、黒のズボン姿、首元の後ろでダークブラウンの髪を纏めて、今まで見た中でもかなりラフな格好をしたオルキデアは、ポットを片手に不思議そうな顔をする。
「どうした? そんなに血相を変えて」
「あ……の……。寝過ごしたのかと思って……」
「まだ朝も早い時間だから大丈夫だ」
オルキデアの目線を辿ると、壁に掛かっている時計は、まだ九時前を指していた。
早い時間と言っても、軍部にいた頃よりは遅い起床時刻の気もするが……。
「熟睡しているようだったから、そのまま寝かせていたが……。起こした方が良かったか?」
「いえ、朝食の用意を……」
「それはさっき様子を見に来たマルテがやって帰った」
どうやら、アリーシャが寝ている間に、二人の様子を見に来たマルテが、朝食を用意してくれたらしい。
悪いことをしてしまったと、アリーシャは肩を落とす。
ポットのお湯をテーブルに置いてあったカップに注ぎながら、「そういえば」とオルキデアは思い出したように話し出す。
「やはり、昨夜の強風で庭の梯子が倒れていたらしい。マルテと一緒に様子を見に来たメイソン氏が言っていた」
「そうでしたか……」
お湯を注いだカップから、コーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
ポットを置いたオルキデアは、再びアリーシャに視線を向けてくる。
「で、いつまで寝間着姿でいるんだ?」
オルキデアに言われて身体を見下ろすと、自分がまだ寝間着のネグリジェ姿だったことに気づく。
羞恥で赤くなりながら、「これは、その……」とアリーシャは口ごもる。
「朝食は俺が用意するから、先に着替えて来い」
「ありがとうございます……」
「朝食が済んだら外に出掛ける。そのつもりでな」
「はい……。あれ、私も一緒に行っていいんですか?」
「当然だろう。君に必要なものでもあるのだからな」
そうして、オルキデアは小さく笑うとカップに口をつけたのだった。