アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
アリーシャが着替えて再び階下の食堂に降りてくると、既にテーブルには朝食が並んでいた。
柔らかそうなパンと卵料理に、瑞々しい野菜のサラダに、湯気の立つコーンのスープに、一口サイズに切られた旬のフルーツの盛り合わせまで用意されていたのだった。
温かそうに湯気が立っているところから、着替えている間に温め直してくれたのだろう。
料理の前に座ったところで、二人分のカップを持ったオルキデアが近づいてきたのだった。
「これを全てマルテさんが?」
「メイソン氏も手伝ったらしいな」
淹れたての紅茶をアリーシャの目の前に置きながら、その疑問に答えてくれた。
向かいの席に座ったオルキデアの前にはコーヒーしか無かった。
アリーシャの視線に気付いたオルキデアが、「食べ終わったばかりだ」と教えてくれる。
「丁度、食べ終わって、皿を洗いながらコーヒーを淹れていたところに、君が起きてきたんだ」
「そうだったんですか……。すみません。何も手伝えなくて……」
朝起きたら、昨晩使ったカップも片付けられていた。きっと、オルキデアが片付けてくれたのだろう。
肩を落としていると、「謝らなくていい」と向かいから声を掛けられる。
「起こさなかったのは俺だ。君が謝る必要はない。……君は気にし過ぎだ。もう少し甘えてもいい」
「甘え……いえ、もう充分甘えています。これ以上、甘える訳にも……」
あまり甘えて迷惑をかける訳にもいかないという意味で言うが、「気にするな」と返される。
「むしろ、変に気を遣われた方が気になるんだ。俺に不満があるんじゃないかと」
「不満なんて、ありません。ただ、迷惑をかける訳にはいかないというだけで……」
それに、オルキデアに嫌われたくなかった。呆れられたくなかった。
どうしてそう思うのか、自分でもわからない。
でも、嫌われてしまうかもしれない、呆れられてしまうかもしれないと考えると、これ以上甘えられなかった。
アリーシャがそれを上手く言葉に出来ないでいると、「無理にとは言わん」とオルキデアは立ち上がる。
「これから、少しずつ甘えていけばいい。君はもう捕虜じゃないんだ。俺に遠慮する必要も、気を遣う必要もない」
「そうでしたね」
軍部から出た以上、自分はもう捕虜のアリーシャではない。オルキデアと結婚したアリーシャだ。
そう言われていたのをアリーシャは思い出す。
「それより、冷める前に食べた方がいい。せっかく温め直したんだ。紅茶も淹れたばかりだ」
「いただきます」
アリーシャが紅茶に口をつけると、オルキデアは部屋を出ていく。
ふうふうと息を吹きかけて、温かいアールグレイティーを味わっていると、オルキデアは新聞を片手に戻ってきた。
アリーシャの向かいに座ると、コーヒーを片手に新聞を読み始めるオルキデアを眺めながら、料理に口をつける。
「美味しいですね」
「昔からマルテの料理は絶品だ」
「料理もですが、紅茶もです。オルキデア様が淹れてくださったんですよね」
アリーシャがコーヒーより紅茶がいいと話してから、オルキデアはアリーシャのために紅茶を用意してくれるようになった。
この屋敷に来てからも変わらないようで、昨晩も食後に紅茶を淹れてくれた。
昨晩、食料庫を覗くと、産地が異なる大量のコーヒー豆だけではなく、果物や花の香りがする紅茶や、ハーブティーや様々な種類の茶葉が常備されていた。
これもオルキデアが用意してくれたのだろう。
その心遣いが嬉しかった。
柔らかそうなパンと卵料理に、瑞々しい野菜のサラダに、湯気の立つコーンのスープに、一口サイズに切られた旬のフルーツの盛り合わせまで用意されていたのだった。
温かそうに湯気が立っているところから、着替えている間に温め直してくれたのだろう。
料理の前に座ったところで、二人分のカップを持ったオルキデアが近づいてきたのだった。
「これを全てマルテさんが?」
「メイソン氏も手伝ったらしいな」
淹れたての紅茶をアリーシャの目の前に置きながら、その疑問に答えてくれた。
向かいの席に座ったオルキデアの前にはコーヒーしか無かった。
アリーシャの視線に気付いたオルキデアが、「食べ終わったばかりだ」と教えてくれる。
「丁度、食べ終わって、皿を洗いながらコーヒーを淹れていたところに、君が起きてきたんだ」
「そうだったんですか……。すみません。何も手伝えなくて……」
朝起きたら、昨晩使ったカップも片付けられていた。きっと、オルキデアが片付けてくれたのだろう。
肩を落としていると、「謝らなくていい」と向かいから声を掛けられる。
「起こさなかったのは俺だ。君が謝る必要はない。……君は気にし過ぎだ。もう少し甘えてもいい」
「甘え……いえ、もう充分甘えています。これ以上、甘える訳にも……」
あまり甘えて迷惑をかける訳にもいかないという意味で言うが、「気にするな」と返される。
「むしろ、変に気を遣われた方が気になるんだ。俺に不満があるんじゃないかと」
「不満なんて、ありません。ただ、迷惑をかける訳にはいかないというだけで……」
それに、オルキデアに嫌われたくなかった。呆れられたくなかった。
どうしてそう思うのか、自分でもわからない。
でも、嫌われてしまうかもしれない、呆れられてしまうかもしれないと考えると、これ以上甘えられなかった。
アリーシャがそれを上手く言葉に出来ないでいると、「無理にとは言わん」とオルキデアは立ち上がる。
「これから、少しずつ甘えていけばいい。君はもう捕虜じゃないんだ。俺に遠慮する必要も、気を遣う必要もない」
「そうでしたね」
軍部から出た以上、自分はもう捕虜のアリーシャではない。オルキデアと結婚したアリーシャだ。
そう言われていたのをアリーシャは思い出す。
「それより、冷める前に食べた方がいい。せっかく温め直したんだ。紅茶も淹れたばかりだ」
「いただきます」
アリーシャが紅茶に口をつけると、オルキデアは部屋を出ていく。
ふうふうと息を吹きかけて、温かいアールグレイティーを味わっていると、オルキデアは新聞を片手に戻ってきた。
アリーシャの向かいに座ると、コーヒーを片手に新聞を読み始めるオルキデアを眺めながら、料理に口をつける。
「美味しいですね」
「昔からマルテの料理は絶品だ」
「料理もですが、紅茶もです。オルキデア様が淹れてくださったんですよね」
アリーシャがコーヒーより紅茶がいいと話してから、オルキデアはアリーシャのために紅茶を用意してくれるようになった。
この屋敷に来てからも変わらないようで、昨晩も食後に紅茶を淹れてくれた。
昨晩、食料庫を覗くと、産地が異なる大量のコーヒー豆だけではなく、果物や花の香りがする紅茶や、ハーブティーや様々な種類の茶葉が常備されていた。
これもオルキデアが用意してくれたのだろう。
その心遣いが嬉しかった。