アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「デザインは何がいい?」
プラチナからピンクゴールドまで、デザインだけでなく、値段も大きさもバラバラの指輪を眺めていると、頭上から声を掛けられる。
「私も決めていいんですか?」
顔を上げながら尋ね返すと、「当然だろう」と当たり前のように返される。
「俺たちが身につけるんだ。気に入ったものを付けた方がいいだろう」
「そうですよね……でも、その前に指のサイズを測ってもいいですか? それから考えます」
「そうだったな」
オルキデアが声を掛けると、孫娘が道具を持って二人の指を測りに来てくれる。
「どの指にしますか?」
「左手の薬指で頼む」
オルキデアはさも当然の様に答えたが、孫娘によると、指輪をどの手の、どの指に付けるかによって、指輪の意味が変わってくるらしい。
オルキデアが最初に言った左手の薬指だと、「愛」や「絆」を深め、右手の薬指だと「心」を安定させる意味となるそうだ。
他の指にもそれぞれ意味があるらしく、結婚指輪と合わせて、他の指にする者も多いらしい。
「そうなんですね……」
知らなかったので感心すると、オルキデアも同じように「そうだな」と話す。
「俺は左手の薬指だけでいいが、彼女は全ての指を測ってくれ。……別に贈り物をしたいんだ」
「はい」
意味がありそうな笑みを浮かべながら、孫娘は先にオルキデアの指のサイズを測ると、次いでアリーシャの指を全て測ってくれる。
アリーシャが指を測っている間、オルキデアは店主と何かを話しているようだった。
「素敵な旦那さんですね」
視線を戻すと、アリーシャの指のサイズを測っている孫娘が微笑んでいた。
「はい……」
少し悩んだ後に、アリーシャは付け加える。
「自慢の……夫、なんです……」
消え入りそうな声でそれだけ答えると、孫娘はまた意味ありげに微笑んだのだった。
孫娘が指のサイズを測り終えた頃に戻って来たオルキデアは、「店主に聞いたんだが……」と、今まで話していた内容を教えてくれる。
「刻印を入れるとなると、早くとも二週間は掛かるらしい。サイズの変更も同じくらい掛かるそうだ。
だが、俺はすぐに指輪が欲しい。デザインが限られてしまうがいいか?」
いつ、ティシュトリアが訪ねて来るかわからない以上、事は急を要する。
暗にそう言われて、アリーシャは二つ返事で承諾したのだった。
「はい。勿論です!」
「助かる。……後日、ちゃんとしたものを贈ろう」
咄嗟に「気を遣わなくていい」と言いかけるが、その時には既に、オルキデアは二人の指のサイズに合って、今日中に身につけて帰れるものを、孫娘に求めていた。
「値段に糸目はつけないが、あまり高くなると分割払いになる」
孫娘はおおよその予算を聞くと、いくつかショーケースの中から出してくれた。
「お二人はお若いようなので、この辺りのデザインが似合いそうです」
そういって用意されたのは、表面が緩やかに曲がったオーバルストレートライン、シンプルながらオーソドックスな形をしたスクエアストレートラインといったデザインの指輪であった。
素材もプラチナからゴールド系と何色かあり、どれがいいのか迷ってしまう。
「どれも若い夫婦から人気で、歳を重ねても身につけられます」
「ほう。そうなのか……」
ーー歳を重ねてもか。
二人の会話を聞きながら、アリーシャの気持ちは沈んでいく。
ティシュトリアがいつ来るかわからない以上、この先、どれくらいオルキデアとのこの関係が続くのかはわからない。
ただ、この孫娘が思っている程、長くは一緒に居られない。
早ければ数日後、遅くても数ヶ月後には目的は達せられるだろう。
ーーいつまで、一緒に居られるのかな。
オルキデアの側に居たいと思う反面、迷惑にならないように早く彼から離れなければとも考える。
オルキデアの側は居心地がいい、だから離れ難く思ってしまう。
けれども、この関係は一時的なもの。
あまり深みに入って、関係が解消された時に離れ難くならないようにしなければならない。
プラチナからピンクゴールドまで、デザインだけでなく、値段も大きさもバラバラの指輪を眺めていると、頭上から声を掛けられる。
「私も決めていいんですか?」
顔を上げながら尋ね返すと、「当然だろう」と当たり前のように返される。
「俺たちが身につけるんだ。気に入ったものを付けた方がいいだろう」
「そうですよね……でも、その前に指のサイズを測ってもいいですか? それから考えます」
「そうだったな」
オルキデアが声を掛けると、孫娘が道具を持って二人の指を測りに来てくれる。
「どの指にしますか?」
「左手の薬指で頼む」
オルキデアはさも当然の様に答えたが、孫娘によると、指輪をどの手の、どの指に付けるかによって、指輪の意味が変わってくるらしい。
オルキデアが最初に言った左手の薬指だと、「愛」や「絆」を深め、右手の薬指だと「心」を安定させる意味となるそうだ。
他の指にもそれぞれ意味があるらしく、結婚指輪と合わせて、他の指にする者も多いらしい。
「そうなんですね……」
知らなかったので感心すると、オルキデアも同じように「そうだな」と話す。
「俺は左手の薬指だけでいいが、彼女は全ての指を測ってくれ。……別に贈り物をしたいんだ」
「はい」
意味がありそうな笑みを浮かべながら、孫娘は先にオルキデアの指のサイズを測ると、次いでアリーシャの指を全て測ってくれる。
アリーシャが指を測っている間、オルキデアは店主と何かを話しているようだった。
「素敵な旦那さんですね」
視線を戻すと、アリーシャの指のサイズを測っている孫娘が微笑んでいた。
「はい……」
少し悩んだ後に、アリーシャは付け加える。
「自慢の……夫、なんです……」
消え入りそうな声でそれだけ答えると、孫娘はまた意味ありげに微笑んだのだった。
孫娘が指のサイズを測り終えた頃に戻って来たオルキデアは、「店主に聞いたんだが……」と、今まで話していた内容を教えてくれる。
「刻印を入れるとなると、早くとも二週間は掛かるらしい。サイズの変更も同じくらい掛かるそうだ。
だが、俺はすぐに指輪が欲しい。デザインが限られてしまうがいいか?」
いつ、ティシュトリアが訪ねて来るかわからない以上、事は急を要する。
暗にそう言われて、アリーシャは二つ返事で承諾したのだった。
「はい。勿論です!」
「助かる。……後日、ちゃんとしたものを贈ろう」
咄嗟に「気を遣わなくていい」と言いかけるが、その時には既に、オルキデアは二人の指のサイズに合って、今日中に身につけて帰れるものを、孫娘に求めていた。
「値段に糸目はつけないが、あまり高くなると分割払いになる」
孫娘はおおよその予算を聞くと、いくつかショーケースの中から出してくれた。
「お二人はお若いようなので、この辺りのデザインが似合いそうです」
そういって用意されたのは、表面が緩やかに曲がったオーバルストレートライン、シンプルながらオーソドックスな形をしたスクエアストレートラインといったデザインの指輪であった。
素材もプラチナからゴールド系と何色かあり、どれがいいのか迷ってしまう。
「どれも若い夫婦から人気で、歳を重ねても身につけられます」
「ほう。そうなのか……」
ーー歳を重ねてもか。
二人の会話を聞きながら、アリーシャの気持ちは沈んでいく。
ティシュトリアがいつ来るかわからない以上、この先、どれくらいオルキデアとのこの関係が続くのかはわからない。
ただ、この孫娘が思っている程、長くは一緒に居られない。
早ければ数日後、遅くても数ヶ月後には目的は達せられるだろう。
ーーいつまで、一緒に居られるのかな。
オルキデアの側に居たいと思う反面、迷惑にならないように早く彼から離れなければとも考える。
オルキデアの側は居心地がいい、だから離れ難く思ってしまう。
けれども、この関係は一時的なもの。
あまり深みに入って、関係が解消された時に離れ難くならないようにしなければならない。