アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「わあ……!」
給仕されたパフェに感嘆の声を上げるアリーシャが愛おしく思えてくる。
バニラアイスの上に盛られた色とりどりのフルーツ、アイスの下にはコーンフレークとコーヒーゼリーらしき黄色と黒色が見えていた。
「いただきます」
きちんと両手を合わせてから、アリーシャはパフェ用のスプーンでフルーツとバニラアイスを掬うと、口に入れる。
「ん、美味しいです!」
「それは良かった」
三角形に切られたサンドイッチを食べながら、オルキデアは返す。
ほどよく焼かれた食パンの内側にバターと練り辛子が塗られ、新鮮な野菜やハム、焼きすぎない程度に火が通された柔らかな卵が挟まれていた。
それがコーヒーによく合っていて、舌鼓を打つ。
店内に流れる穏やかな曲と、他の客が交わす賑やかな談笑を聴きながら黙々と食べていると、不意にアリーシャのスプーンが止まる。
「……昔、まだ母と暮らしていた頃に、パフェほどじゃありませんが、こうしてバニラアイスに好きなフルーツを乗せて食べたことがあります」
「そうなのか?」
アリーシャの話によると、娼婦街に住んでいた頃、とある夏の日に、アリーシャの母の娼婦仲間からフルーツを貰ったことがあったらしい。
馴染みの客が、差し入れとして持ってきたが、娼館では食べきれないからと、分けてもらったそうだ。
「母はどこからかバニラアイスを買って来ると、フルーツを切って、バニラアイスに乗せて食べるように勧めてきたんです」
パフェ用のスプーンで、バニラアイスと一緒にチェリーと思しきフルーツを掬いながら、アリーシャは続ける。
「母と一緒にどのフルーツがいいとか、どこに乗せるといいとか、二人で話しながら、二人だけのパフェを作る時間が楽しかったです。私もまだ子供で加減が分からなかったから、ついついフルーツを乗せすぎてしまって……。お皿から落としそうになりました」
きっと、アリーシャにとっては、母との大切な思い出なのだろう。
いつになく穏やかな表情をしているのが、その証だった。
「そうか」
「新鮮なフルーツって、シュタルクヘルトではなかなか食べられなかったんです。
下町や娼婦街でフルーツといえば、乾燥させたものや傷んだものが主なもので、新鮮なフルーツは高級な娼館でしか見れない、高級品のイメージでした。
シュタルクヘルト家でも兄弟や弟妹たちが食べてしまうので、私にはよくても兄弟や姉妹たちが残したものか、切れ端しか貰えなくって」
アリーシャから話を聞いたオルキデアは、次いで自分の皿を見る。
皿の上にはまだサンドイッチが残っていた。ーーデザート系のサンドイッチが。
オルキデアは小さく笑うと、すうっとアリーシャに向けて自分の皿を差し出した。
「これも食べるといい」
「いいんですか? でも、これって……?」
「フルーツサンドだ。パンの間に生クリームとフルーツが入ってる。
甘い物が苦手な俺はどのみち食べられないから、君が食べてくれ」
元々、アリーシャにあげるつもりではあったが、今の思い出話を聞いて、ますますあげたくなった。
「フルーツを挟んだサンドイッチがあるんですね」
「あまり珍しくはないが……。そうか、君から見ると珍しいんだな」
子供の頃ーーまだ今ほど甘味が苦手じゃなかった頃、通いで屋敷に来ていたマルテや、当時、屋敷に住んでいた専属のシェフが、よくおやつ代わりにフルーツサンドを作ってくれた。
ペルフェクトの郊外では、フルーツの栽培が盛んで、時季によっては下町でも安価な値段で手に入った。
季節の変わり目に、父のエラフの知り合いやメイソンが差し入れてくれることもあって、オルキデアにとって、フルーツはいつでも食べられるものであった。
(同じものでも、住む場所や立場が違えば、また違うものになるんだな)
口元に生クリームをつけて、目の前で美味しそうにパフェとフルーツサンドを頬張るアリーシャを見ていると、ますますそう思えてくる。
給仕されたパフェに感嘆の声を上げるアリーシャが愛おしく思えてくる。
バニラアイスの上に盛られた色とりどりのフルーツ、アイスの下にはコーンフレークとコーヒーゼリーらしき黄色と黒色が見えていた。
「いただきます」
きちんと両手を合わせてから、アリーシャはパフェ用のスプーンでフルーツとバニラアイスを掬うと、口に入れる。
「ん、美味しいです!」
「それは良かった」
三角形に切られたサンドイッチを食べながら、オルキデアは返す。
ほどよく焼かれた食パンの内側にバターと練り辛子が塗られ、新鮮な野菜やハム、焼きすぎない程度に火が通された柔らかな卵が挟まれていた。
それがコーヒーによく合っていて、舌鼓を打つ。
店内に流れる穏やかな曲と、他の客が交わす賑やかな談笑を聴きながら黙々と食べていると、不意にアリーシャのスプーンが止まる。
「……昔、まだ母と暮らしていた頃に、パフェほどじゃありませんが、こうしてバニラアイスに好きなフルーツを乗せて食べたことがあります」
「そうなのか?」
アリーシャの話によると、娼婦街に住んでいた頃、とある夏の日に、アリーシャの母の娼婦仲間からフルーツを貰ったことがあったらしい。
馴染みの客が、差し入れとして持ってきたが、娼館では食べきれないからと、分けてもらったそうだ。
「母はどこからかバニラアイスを買って来ると、フルーツを切って、バニラアイスに乗せて食べるように勧めてきたんです」
パフェ用のスプーンで、バニラアイスと一緒にチェリーと思しきフルーツを掬いながら、アリーシャは続ける。
「母と一緒にどのフルーツがいいとか、どこに乗せるといいとか、二人で話しながら、二人だけのパフェを作る時間が楽しかったです。私もまだ子供で加減が分からなかったから、ついついフルーツを乗せすぎてしまって……。お皿から落としそうになりました」
きっと、アリーシャにとっては、母との大切な思い出なのだろう。
いつになく穏やかな表情をしているのが、その証だった。
「そうか」
「新鮮なフルーツって、シュタルクヘルトではなかなか食べられなかったんです。
下町や娼婦街でフルーツといえば、乾燥させたものや傷んだものが主なもので、新鮮なフルーツは高級な娼館でしか見れない、高級品のイメージでした。
シュタルクヘルト家でも兄弟や弟妹たちが食べてしまうので、私にはよくても兄弟や姉妹たちが残したものか、切れ端しか貰えなくって」
アリーシャから話を聞いたオルキデアは、次いで自分の皿を見る。
皿の上にはまだサンドイッチが残っていた。ーーデザート系のサンドイッチが。
オルキデアは小さく笑うと、すうっとアリーシャに向けて自分の皿を差し出した。
「これも食べるといい」
「いいんですか? でも、これって……?」
「フルーツサンドだ。パンの間に生クリームとフルーツが入ってる。
甘い物が苦手な俺はどのみち食べられないから、君が食べてくれ」
元々、アリーシャにあげるつもりではあったが、今の思い出話を聞いて、ますますあげたくなった。
「フルーツを挟んだサンドイッチがあるんですね」
「あまり珍しくはないが……。そうか、君から見ると珍しいんだな」
子供の頃ーーまだ今ほど甘味が苦手じゃなかった頃、通いで屋敷に来ていたマルテや、当時、屋敷に住んでいた専属のシェフが、よくおやつ代わりにフルーツサンドを作ってくれた。
ペルフェクトの郊外では、フルーツの栽培が盛んで、時季によっては下町でも安価な値段で手に入った。
季節の変わり目に、父のエラフの知り合いやメイソンが差し入れてくれることもあって、オルキデアにとって、フルーツはいつでも食べられるものであった。
(同じものでも、住む場所や立場が違えば、また違うものになるんだな)
口元に生クリームをつけて、目の前で美味しそうにパフェとフルーツサンドを頬張るアリーシャを見ていると、ますますそう思えてくる。