アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「使っていないガーデンテーブルが物置にあったな。それを外に出そう。
うちにはガゼボはないが、ガーデンテーブルにパラソルでもあれば……まあ、テラス席ぐらいにはなるだろう」
「それって……」
「俺もやってみたくなった。君が話す、月夜のガゼボで紅茶を片手にする読書を」
綺麗な月に美味しい紅茶もあれば、いつもより読書が捗るかもしれない。
アリーシャが話す「幻想的な空間」になるかはわからないが、それに近いものを見れるかもしれないと、そう思ったのだった。
「せっかくやるなら、贅沢に菓子も用意しよう。紅茶に合うような甘いものを……いや、待てよ。それなら俺は、紅茶よりコーヒーの方がいいな。甘い菓子を食べた後は、苦味のあるコーヒーに限るからな」
オルキデアはちらっと手元の小さな紙袋を見る。
先程、マルテたちに配った菓子と同じものをオルキデアは持っている。
せっかくならと、アリーシャが食べる分も購入したのだった。
最初、本人は「いいです」と固辞したが、明らかに視線は売り場の菓子に釘付けだった。
そこで、箱入りだけではなく、中身の菓子のバラ売りも行っていると、売り場の店員から聞いたオルキデアは、アリーシャの分も購入したのだった。
さすがのアリーシャも受け取らざるを得ないと考えたようで、「ありがとうございます」と恥ずかしそうに、けれどもどこか嬉しそうに受け取っていた。
(もし、アリーシャが気に入ったのなら、この菓子も候補に入れるとするか)
「そうですね。お菓子もあったら、贅沢な月夜のティーパーティーになりますね。
でも、夜半に甘いものは良くないと言われているので、せっかくお菓子があるなら、昼間にもやってみたいです。……いつかは」
「今なら出来るだろう」
「それって……」
「菓子と茶葉なら最高級の良いものを用意する。庭も綺麗に整えて、ガゼボに近いものを作る。……月の綺麗な夜間だけじゃない。天気が良い暖かい昼間にもやろう」
「いいんですか? やっても……」
「勿論だ。その代わりに、俺も同席させてくれるか?」
薄闇の中でも、菫色の瞳が、花が咲くようにぱあっと輝いたのがわかった。
「はい! その時は一緒にやりましょう!」
一つに結んだ藤色の髪が大きく揺れる。
「メイソンさんが手入れしたお庭で出来るって、素敵ですよね」
「そうだな。メイソン氏もきっと喜ぶぞ」
嬉しそうに話すアリーシャを眺めながら、オルキデアは考える。
せめて一緒に暮らしている間は、アリーシャに様々な楽しい思い出を作って欲しい。
たくさん新しい経験をして、新しい場所に出掛けて、楽しい思い出を作って。
これまで我慢し続けた分、ここでは楽しい時を過ごして欲しい。
そう、願わずにはいられなかった。
「アリーシャ」
呼びかけると、興奮気味に話していたアリーシャは「はい?」と返す。
「今日は楽しかったか?」
「はい! とっても!」
屈託ない笑みを浮かべる仮初めの妻に、オルキデアは満足気に頷いたのだった。
うちにはガゼボはないが、ガーデンテーブルにパラソルでもあれば……まあ、テラス席ぐらいにはなるだろう」
「それって……」
「俺もやってみたくなった。君が話す、月夜のガゼボで紅茶を片手にする読書を」
綺麗な月に美味しい紅茶もあれば、いつもより読書が捗るかもしれない。
アリーシャが話す「幻想的な空間」になるかはわからないが、それに近いものを見れるかもしれないと、そう思ったのだった。
「せっかくやるなら、贅沢に菓子も用意しよう。紅茶に合うような甘いものを……いや、待てよ。それなら俺は、紅茶よりコーヒーの方がいいな。甘い菓子を食べた後は、苦味のあるコーヒーに限るからな」
オルキデアはちらっと手元の小さな紙袋を見る。
先程、マルテたちに配った菓子と同じものをオルキデアは持っている。
せっかくならと、アリーシャが食べる分も購入したのだった。
最初、本人は「いいです」と固辞したが、明らかに視線は売り場の菓子に釘付けだった。
そこで、箱入りだけではなく、中身の菓子のバラ売りも行っていると、売り場の店員から聞いたオルキデアは、アリーシャの分も購入したのだった。
さすがのアリーシャも受け取らざるを得ないと考えたようで、「ありがとうございます」と恥ずかしそうに、けれどもどこか嬉しそうに受け取っていた。
(もし、アリーシャが気に入ったのなら、この菓子も候補に入れるとするか)
「そうですね。お菓子もあったら、贅沢な月夜のティーパーティーになりますね。
でも、夜半に甘いものは良くないと言われているので、せっかくお菓子があるなら、昼間にもやってみたいです。……いつかは」
「今なら出来るだろう」
「それって……」
「菓子と茶葉なら最高級の良いものを用意する。庭も綺麗に整えて、ガゼボに近いものを作る。……月の綺麗な夜間だけじゃない。天気が良い暖かい昼間にもやろう」
「いいんですか? やっても……」
「勿論だ。その代わりに、俺も同席させてくれるか?」
薄闇の中でも、菫色の瞳が、花が咲くようにぱあっと輝いたのがわかった。
「はい! その時は一緒にやりましょう!」
一つに結んだ藤色の髪が大きく揺れる。
「メイソンさんが手入れしたお庭で出来るって、素敵ですよね」
「そうだな。メイソン氏もきっと喜ぶぞ」
嬉しそうに話すアリーシャを眺めながら、オルキデアは考える。
せめて一緒に暮らしている間は、アリーシャに様々な楽しい思い出を作って欲しい。
たくさん新しい経験をして、新しい場所に出掛けて、楽しい思い出を作って。
これまで我慢し続けた分、ここでは楽しい時を過ごして欲しい。
そう、願わずにはいられなかった。
「アリーシャ」
呼びかけると、興奮気味に話していたアリーシャは「はい?」と返す。
「今日は楽しかったか?」
「はい! とっても!」
屈託ない笑みを浮かべる仮初めの妻に、オルキデアは満足気に頷いたのだった。