アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
あどけない寝顔
その日、屋敷に戻ったオルキデアは自室に入って上着を脱ぐと、すぐに電子メールを立ち上げた。
夫婦として準備は整った。
後は新しい縁談話を持ってくるであろうティシュトリアに打ち勝つ為の用意をするだけであった。
その辺りの指示は、既に済ませていた。
アリーシャの事情を知っており、オルキデアの腹心となる二人の部下であるアルフェラッツとラカイユに、それぞれティシュトリアに関する調査を依頼していた。
二人にはオルキデアがしばらく休暇を取って、アリーシャと共に屋敷に滞在していることを伝えている。
休暇中でも、有事の際には軍部に行くつもりだが、それ以外は優秀な部下たちだけで大丈夫だろう。
その優秀な部下たちが、早速、それぞれ調査結果を纏めた電子メールを送ってきたのだった。
軍関係者を中心として、ティシュトリアに関する情報を探してきたようで、よくまとまった結果であった。
(相変わらず、仕事が早い)
調査を依頼したのが、アリーシャと婚姻届を書いた次の日だったので、短期間で調査してくれた事になる。
それぞれ、自分の仕事もあっただろうに。部下たちの仕事の早さには脱帽せざるを得なかった。
電子メールをざっと読んで、それぞれ返信を送ると、電子メール画面を消して、オルキデアは立ち上がる。
着替えを持つと、部屋に備え付けの浴室に向かったのだった。
シャワーを浴びて、寝間着に着替えて戻って来ると、昨晩読んでいた本を開く。
パラパラとページを捲り、残りが数十ページであることを確認すると、一度本を閉じる。
(やはり次の巻数を読んでから、最初の巻数に戻るべきだろうか……)
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされたのだった。
「ん?」
誰何せずとも、この屋敷には二人しか住んでいない。
オルキデアでなければ、外にいるのは残りの一人しかいない。
立ち上がって扉を開けると、案の定、ノックをしていたのは、オルキデア以外のもう一人ーー仮妻であった。
「どうした?」
「あの……」
肩からショールをかけた寝間着姿のアリーシャは、恥ずかしそうに俯いていた。
「さっき来たら、お部屋にいなかったので……」
「ああ、シャワーを浴びていたからな。……まさか、ずっとここで待っていたのか?」
夜になって気温が下がったのか、廊下はひんやりと肌寒くなっていた。
各部屋に暖房はあっても、廊下には設置していないので、寝間着では寒いだろう。
もし、オルキデアの言った通りなら、ずっと寒い中、廊下で待たせていたことになる。
ショールを掛けているとはいえ、風邪を引いてしまうかもしれない。
不安になって尋ねたが、アリーシャは首を振った。
「いいえ。一度部屋に戻って、今来ました」
廊下で待っていなかったと知り、安堵する。
「何かあったのか?」
「何かあった訳ではないんですが、その……」
言いづらそうに俯いたアリーシャに、オルキデアは肩を落とす。
「ここで立ち話をしても身体が冷えるだろう。部屋に入らないか」
部屋に招き入れると、ソファーに案内する。
ショールを脱いでアリーシャが座ると、その対面にオルキデアも座る。
「すみません。やっぱり、まだ一人が怖くて……」
人の気配が絶えない環境下で育ったからだろう。
人気がない屋敷の中で、不安になる気持ちもわかる。
(ベッドの中で丸くなって耳を塞ぐのではなく、俺を頼ってくれるのは、信頼されていると、自負していいんだな)
そうじゃなければ、寒い中、わざわざ再訪しないだろう。
フッと笑うと、アリーシャはますます赤面して、身を縮めてしまった。
「気を悪くしたならすまない。だが昨晩、添い寝くらいなら、いくらでも付き合うと言ったからな。……早速来てくれて、嬉しいよ」
「えっ、そうなんですか?」
「冗談だ」
「もう……」
不満気な顔をするアリーシャがおかしくて、ついオルキデアも笑みを深めたのだった。
夫婦として準備は整った。
後は新しい縁談話を持ってくるであろうティシュトリアに打ち勝つ為の用意をするだけであった。
その辺りの指示は、既に済ませていた。
アリーシャの事情を知っており、オルキデアの腹心となる二人の部下であるアルフェラッツとラカイユに、それぞれティシュトリアに関する調査を依頼していた。
二人にはオルキデアがしばらく休暇を取って、アリーシャと共に屋敷に滞在していることを伝えている。
休暇中でも、有事の際には軍部に行くつもりだが、それ以外は優秀な部下たちだけで大丈夫だろう。
その優秀な部下たちが、早速、それぞれ調査結果を纏めた電子メールを送ってきたのだった。
軍関係者を中心として、ティシュトリアに関する情報を探してきたようで、よくまとまった結果であった。
(相変わらず、仕事が早い)
調査を依頼したのが、アリーシャと婚姻届を書いた次の日だったので、短期間で調査してくれた事になる。
それぞれ、自分の仕事もあっただろうに。部下たちの仕事の早さには脱帽せざるを得なかった。
電子メールをざっと読んで、それぞれ返信を送ると、電子メール画面を消して、オルキデアは立ち上がる。
着替えを持つと、部屋に備え付けの浴室に向かったのだった。
シャワーを浴びて、寝間着に着替えて戻って来ると、昨晩読んでいた本を開く。
パラパラとページを捲り、残りが数十ページであることを確認すると、一度本を閉じる。
(やはり次の巻数を読んでから、最初の巻数に戻るべきだろうか……)
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされたのだった。
「ん?」
誰何せずとも、この屋敷には二人しか住んでいない。
オルキデアでなければ、外にいるのは残りの一人しかいない。
立ち上がって扉を開けると、案の定、ノックをしていたのは、オルキデア以外のもう一人ーー仮妻であった。
「どうした?」
「あの……」
肩からショールをかけた寝間着姿のアリーシャは、恥ずかしそうに俯いていた。
「さっき来たら、お部屋にいなかったので……」
「ああ、シャワーを浴びていたからな。……まさか、ずっとここで待っていたのか?」
夜になって気温が下がったのか、廊下はひんやりと肌寒くなっていた。
各部屋に暖房はあっても、廊下には設置していないので、寝間着では寒いだろう。
もし、オルキデアの言った通りなら、ずっと寒い中、廊下で待たせていたことになる。
ショールを掛けているとはいえ、風邪を引いてしまうかもしれない。
不安になって尋ねたが、アリーシャは首を振った。
「いいえ。一度部屋に戻って、今来ました」
廊下で待っていなかったと知り、安堵する。
「何かあったのか?」
「何かあった訳ではないんですが、その……」
言いづらそうに俯いたアリーシャに、オルキデアは肩を落とす。
「ここで立ち話をしても身体が冷えるだろう。部屋に入らないか」
部屋に招き入れると、ソファーに案内する。
ショールを脱いでアリーシャが座ると、その対面にオルキデアも座る。
「すみません。やっぱり、まだ一人が怖くて……」
人の気配が絶えない環境下で育ったからだろう。
人気がない屋敷の中で、不安になる気持ちもわかる。
(ベッドの中で丸くなって耳を塞ぐのではなく、俺を頼ってくれるのは、信頼されていると、自負していいんだな)
そうじゃなければ、寒い中、わざわざ再訪しないだろう。
フッと笑うと、アリーシャはますます赤面して、身を縮めてしまった。
「気を悪くしたならすまない。だが昨晩、添い寝くらいなら、いくらでも付き合うと言ったからな。……早速来てくれて、嬉しいよ」
「えっ、そうなんですか?」
「冗談だ」
「もう……」
不満気な顔をするアリーシャがおかしくて、ついオルキデアも笑みを深めたのだった。