アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「そう……。ねぇ、アリーシャさん。折り入って相談があるの」
「なんでしょうか?」
「うちの息子より、もっといい男を紹介してあげる。だから、うちの息子とは別れなさい」
ティシュトリアのこの言葉には、オルキデア自身も驚きを隠せなかった。
「母上、どういうことですか?」
「さっきから言ってるでしょう。貴方にアリーシャさんは相応しくないもの。
貴方が諦めないなら、彼女から別れてもらうしかないでしょう」
ティシュトリアは「ねぇ、アリーシャさん」と、アリーシャを見つめる。
「私はね。男性の知り合いが沢山いるの。
オーキッドより身分や階級が高くて、見目麗しい人。貴女が望む人も、きっと紹介出来ると思うわ」
ティシュトリアの甘言にアリーシャはどう返すのか、オルキデアは気が気じゃ無かった。
「どう、悪い話では無いと思うんだけど……」
「お断りします」
即答したアリーシャの言葉に、ティシュトリアだけではなく、オルキデアも驚きを隠しきれず、傍らを振り向く。
「どうして、アリーシャさん?」
「私もオルキデア様を愛しているからです」
胸元を握り締めながら、アリーシャはじっとティシュトリアを見つめ返しながら続ける。
「オルキデア様は、ひとりぼっちで、何も取り柄がない私に優しくしてくれました。
それだけではありません。私が困っている時はいつも助けてくれました。
悲しい時や苦しい時は、慰めてくれました。
寂しい時や泣いてしまった時は、傍に寄り添ってくれました」
「アリーシャ……」
アリーシャの口から自分について聞くのは、これが始めてだった。
出会ってから、アリーシャは様々な困難に見舞われた。
オルキデア自身の事情にも、巻き込んでしまった。
きっと、迷惑しているだろうと思っていたが。
「こんな私が甘えても許してくれました。迷惑かけても怒りませんでした。
私には何も無いのに。良いところなんて、何も無いのに……」
「アリーシャ」
声がくぐもってきたアリーシャを引き寄せると抱きしめる。
「オルキデア様……」
「俺も助かっている。ありがとう」
これも全て演技かもしれない。
それでも、この言葉だけは伝え無ければならないと、そう思った。
「と、言うことです。母上。俺も、アリーシャも、別れる気はありません」
唇を噛み締めて、怒りに染まったティシュトリアは、二人を睨み付けていた。
「どうして、私の思い通りにならないのよ……!」
「俺たちは貴女の道具では無いからです。
子供は親の道具じゃない。自分の意思を持ち、自分の意思に従って物事を決める」
子供は親の道具ではない。
人である以上、オルキデアだけではなくアリーシャも意思を持っている。
貴族社会では、家の為と言って、親に従って好きでもない者と結婚することは珍しくない。
実際にティシュトリアは実家に言われて、ラナンキュラス家に嫁いできた。
けれども、本来は身分に関係なく相思相愛になった者と結婚するべきなのだ。
クシャースラとセシリア、メイソンとマルテのように。
「この女、うちの息子を誑かして」
アリーシャがわからないと思って、ハルモニア語で話したのだろうが、それを聞き咎めたアリーシャは「誑かしていません!」とハルモニア語で返したのだった。
「私はオルキデア様が好きだから、結婚したんです。
オルキデア様が自分の意思で結婚を決めたように、私も自分の意思で結婚を決めました」
アリーシャを抱きしめながら、「それよりいいんですか?」とオルキデアは話し出す。
「母上が、現在、付き合っている元敵国の高級士官である男。最近、悪い噂が流れていますよ」
「悪い噂?」
「敵国の間諜ーースパイの容疑がかけられています。敵国に我が国の情報を流出していると」
この「悪い噂」こそが、アルフェラッツからもたらされた「とある噂話」であった。
「なんでしょうか?」
「うちの息子より、もっといい男を紹介してあげる。だから、うちの息子とは別れなさい」
ティシュトリアのこの言葉には、オルキデア自身も驚きを隠せなかった。
「母上、どういうことですか?」
「さっきから言ってるでしょう。貴方にアリーシャさんは相応しくないもの。
貴方が諦めないなら、彼女から別れてもらうしかないでしょう」
ティシュトリアは「ねぇ、アリーシャさん」と、アリーシャを見つめる。
「私はね。男性の知り合いが沢山いるの。
オーキッドより身分や階級が高くて、見目麗しい人。貴女が望む人も、きっと紹介出来ると思うわ」
ティシュトリアの甘言にアリーシャはどう返すのか、オルキデアは気が気じゃ無かった。
「どう、悪い話では無いと思うんだけど……」
「お断りします」
即答したアリーシャの言葉に、ティシュトリアだけではなく、オルキデアも驚きを隠しきれず、傍らを振り向く。
「どうして、アリーシャさん?」
「私もオルキデア様を愛しているからです」
胸元を握り締めながら、アリーシャはじっとティシュトリアを見つめ返しながら続ける。
「オルキデア様は、ひとりぼっちで、何も取り柄がない私に優しくしてくれました。
それだけではありません。私が困っている時はいつも助けてくれました。
悲しい時や苦しい時は、慰めてくれました。
寂しい時や泣いてしまった時は、傍に寄り添ってくれました」
「アリーシャ……」
アリーシャの口から自分について聞くのは、これが始めてだった。
出会ってから、アリーシャは様々な困難に見舞われた。
オルキデア自身の事情にも、巻き込んでしまった。
きっと、迷惑しているだろうと思っていたが。
「こんな私が甘えても許してくれました。迷惑かけても怒りませんでした。
私には何も無いのに。良いところなんて、何も無いのに……」
「アリーシャ」
声がくぐもってきたアリーシャを引き寄せると抱きしめる。
「オルキデア様……」
「俺も助かっている。ありがとう」
これも全て演技かもしれない。
それでも、この言葉だけは伝え無ければならないと、そう思った。
「と、言うことです。母上。俺も、アリーシャも、別れる気はありません」
唇を噛み締めて、怒りに染まったティシュトリアは、二人を睨み付けていた。
「どうして、私の思い通りにならないのよ……!」
「俺たちは貴女の道具では無いからです。
子供は親の道具じゃない。自分の意思を持ち、自分の意思に従って物事を決める」
子供は親の道具ではない。
人である以上、オルキデアだけではなくアリーシャも意思を持っている。
貴族社会では、家の為と言って、親に従って好きでもない者と結婚することは珍しくない。
実際にティシュトリアは実家に言われて、ラナンキュラス家に嫁いできた。
けれども、本来は身分に関係なく相思相愛になった者と結婚するべきなのだ。
クシャースラとセシリア、メイソンとマルテのように。
「この女、うちの息子を誑かして」
アリーシャがわからないと思って、ハルモニア語で話したのだろうが、それを聞き咎めたアリーシャは「誑かしていません!」とハルモニア語で返したのだった。
「私はオルキデア様が好きだから、結婚したんです。
オルキデア様が自分の意思で結婚を決めたように、私も自分の意思で結婚を決めました」
アリーシャを抱きしめながら、「それよりいいんですか?」とオルキデアは話し出す。
「母上が、現在、付き合っている元敵国の高級士官である男。最近、悪い噂が流れていますよ」
「悪い噂?」
「敵国の間諜ーースパイの容疑がかけられています。敵国に我が国の情報を流出していると」
この「悪い噂」こそが、アルフェラッツからもたらされた「とある噂話」であった。