アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
作戦決行
アリーシャに呼び出されたのは、仮の名をつけてから二日後の夕方だった。
オルキデアが様子を見に行ったので、しばらくは犯人に警戒されるだろうと思っていたが、そんなことはないようだった。
それがいいのかは、わからないがーー。
「ラナンキュラス様……。本当に来てくださったんですね」
アルフェラッツを伴って執務室から駆けつけたオルキデアを、アリーシャは胸を撫で下ろしたようだった。
「約束したからな。それが、例の?」
アリーシャの目の前には、ほぼ手付かずの夕食が置かれている。
今日は下士官以下の兵と、同じメニューらしい。
アルフェラッツによると、病院食の必要がないアリーシャには、その日に余ったメニューの中から、食事が提供されているらしい。
言われてみれば、二日前にオルキデアが来た時に新兵が運んでいたのは、将官と同じメニューだったことを思い出す。
将官クラスのメニューには、肉や高級な魚などが食事に出る頻度が高い。手の込んだ料理が提供されるのも特徴的だろう。
対して、下士官以下は野菜料理が中心であり、期限切れの近い保存食が食事に出る。
さっと茹でられ、軽く炒められただけのあまり手の込んでいない料理が提供されることが多い。
(運んでいた兵は、アリーシャの方が自分たちより豪華なメニューを食べていると、嫉妬しそうだな)
食事に拘りがないオルキデアは、下士官と同じメニューでも構わないが、気にする者もいるだろう。
この辺りも、捕虜として保護したアリーシャと食事を運ぶ兵の両者に対して、配慮が必要だろう。
「多分……。一口食べたら、味がおかしかったので……」
アリーシャから食事のトレイを受け取ると、アルフェラッツと一緒に観察する。
見た目に異変は無いようだった。クンクンとアルフェラッツは臭いを嗅いだ。
「臭いは特にしませんが……」
「そうだな。薬の特定をしてくれないか? それと、アリーシャに代わりの食事を」
アルフェラッツは承諾すると、すぐに部屋から退室する。
アリーシャに向き直ると、不安そうな菫色の瞳と視線が交差した。
「安心しろ。今夜中に解決させる」
落ち着かせるように口元を緩めると、相手もつられて小さく微笑む。
「ラナンキュラス様なら、大丈夫だと信じています。でも、無理はしないで下さい。
怪我をされたらと思うと心配で……」
「問題ない。こう見えて、俺は軍人だ。腕っ節には自信がある。
士官学校時代に、腕に自信のある同期から喧嘩を売られて、引き分けに持ち込んだくらいだ」
今から何年も前の士官学校時代、「自称・平民代表」という同期に呼び出されて、掴み合いの喧嘩をした。
結果は引き分けーーというより、オルキデアの反撃が意外だったようで、相手も相当油断していて、引き分けになったようなものだが。
その際に、騒ぎを聞きつけた別の同期が呼び出した教官に怒られ、罰則として一週間の居残りと倉庫掃除を命じられたのだった。
戦いに明け暮れる今では、士官学校時代のいい思い出だった。
ちなみに、その時に教官より先に駆けつけた同期がいたが、それが後に執務室の掃除を手伝ってくれる様になる既婚者の親友であった。
オルキデアが様子を見に行ったので、しばらくは犯人に警戒されるだろうと思っていたが、そんなことはないようだった。
それがいいのかは、わからないがーー。
「ラナンキュラス様……。本当に来てくださったんですね」
アルフェラッツを伴って執務室から駆けつけたオルキデアを、アリーシャは胸を撫で下ろしたようだった。
「約束したからな。それが、例の?」
アリーシャの目の前には、ほぼ手付かずの夕食が置かれている。
今日は下士官以下の兵と、同じメニューらしい。
アルフェラッツによると、病院食の必要がないアリーシャには、その日に余ったメニューの中から、食事が提供されているらしい。
言われてみれば、二日前にオルキデアが来た時に新兵が運んでいたのは、将官と同じメニューだったことを思い出す。
将官クラスのメニューには、肉や高級な魚などが食事に出る頻度が高い。手の込んだ料理が提供されるのも特徴的だろう。
対して、下士官以下は野菜料理が中心であり、期限切れの近い保存食が食事に出る。
さっと茹でられ、軽く炒められただけのあまり手の込んでいない料理が提供されることが多い。
(運んでいた兵は、アリーシャの方が自分たちより豪華なメニューを食べていると、嫉妬しそうだな)
食事に拘りがないオルキデアは、下士官と同じメニューでも構わないが、気にする者もいるだろう。
この辺りも、捕虜として保護したアリーシャと食事を運ぶ兵の両者に対して、配慮が必要だろう。
「多分……。一口食べたら、味がおかしかったので……」
アリーシャから食事のトレイを受け取ると、アルフェラッツと一緒に観察する。
見た目に異変は無いようだった。クンクンとアルフェラッツは臭いを嗅いだ。
「臭いは特にしませんが……」
「そうだな。薬の特定をしてくれないか? それと、アリーシャに代わりの食事を」
アルフェラッツは承諾すると、すぐに部屋から退室する。
アリーシャに向き直ると、不安そうな菫色の瞳と視線が交差した。
「安心しろ。今夜中に解決させる」
落ち着かせるように口元を緩めると、相手もつられて小さく微笑む。
「ラナンキュラス様なら、大丈夫だと信じています。でも、無理はしないで下さい。
怪我をされたらと思うと心配で……」
「問題ない。こう見えて、俺は軍人だ。腕っ節には自信がある。
士官学校時代に、腕に自信のある同期から喧嘩を売られて、引き分けに持ち込んだくらいだ」
今から何年も前の士官学校時代、「自称・平民代表」という同期に呼び出されて、掴み合いの喧嘩をした。
結果は引き分けーーというより、オルキデアの反撃が意外だったようで、相手も相当油断していて、引き分けになったようなものだが。
その際に、騒ぎを聞きつけた別の同期が呼び出した教官に怒られ、罰則として一週間の居残りと倉庫掃除を命じられたのだった。
戦いに明け暮れる今では、士官学校時代のいい思い出だった。
ちなみに、その時に教官より先に駆けつけた同期がいたが、それが後に執務室の掃除を手伝ってくれる様になる既婚者の親友であった。