アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「それで、なんでお前さんは、二日も連続で、俺の執務室に居るんだ? それも、おれや部下の誰よりも早く来て」
そう言って、自分の執務机に肘をついたクシャースラは呆れてため息を吐いた。
そんな親友を、ソファーに寝そべっていたオルキデアは無視したのだった。
次の日、アリーシャが起きる前に屋敷を出たオルキデアだったが、他に行く当てもなく、軍部内のクシャースラの執務室にいた。
昨日の昼過ぎまでは、実際に仕事があって自分の執務室に居た。
仕事が終わってからは、特にやることはなかったが、屋敷に帰って、アリーシャとどんな顔をして会えばいいのかわからず、また自分の執務室に居ると、代わりに仕事をしてくれているラカイユやアルフェラッツの視線が痛いので、親友の元を訪ねていた。
オルキデアの執務室とは違い、整頓が行き届いたクシャースラの執務室のソファーでしばらく寝そべっていると、とうとう親友が仕事を中断して、心配したように側にやって来たのだった。
「何かあったのか? お前らしくもない」
「……好きだって、告白されたんだ。それで、どう返事をしたらいいか、わからなかった」
「へぇ~。珍しいな。いつものように速攻で断らないなんて。そんなに美人だったのか。相手はどこの令嬢だ?」
「アリーシャだ」
「ああ、アリーシャ……って、アリーシャ嬢!?」
「そうだ」と肯定すると、クシャースラはまたため息を吐く。
「アリーシャ嬢から告白されたのか。それで何を迷っているんだ?」
「アリーシャには再三、俺よりいい男と結婚しろと言ってきた。
それなのに、俺と結婚したい、他の男は考えられないと言われた」
オルキデアはソファーから起き上がると、目を伏せた。
「どうして、俺なんかを選んだんだろうな。彼女は」
アリーシャの様な、可憐で器量の良い娘なら、自分より他にもっと似合う男がいるはずだ。
それなのに、何故彼女は自分を選んだのだろう。
オルキデアは名ばかりの貴族であり、借金は返済したもののまともな財産を持っていない。
軍での階級は少将であるが、取り立てて誇る様な功績もない。
それどころか、過去の経験から北部基地では使えない兵だというのに。
「それで、お前さんはどう思っているんだ?」
オルキデアの向かいに座りながら、クシャースラが尋ねてくる。
「アリーシャ嬢のことが好きなのか?」
「……わからない」
「わからない? 好きでもなんともないのか?」
「アリーシャはこれまで出会ったどの女性とも違う。世間知らずで、好奇心旺盛で、食べることが好きで。身分に関係なく優しくて、気取ったところもなく、自分の気持ちを素直に伝えてくるんだ」
これまでの環境もあるだろが、アリーシャは何にでも興味を持っていた。
どんなことにも「凄い」と言って感動した。
綺麗な花を見て「綺麗」と、美味しい食べ物を食べて「美味しい」と、素直に喜べる心を持っていた。
身分に関係なく、相手にきちんと礼を言い、遠慮しているのか、我が儘もなかなか言わない。
静寂も平気で、何も話さず、ただオルキデアの側に寄り添ってくれたこともあった。
オルキデアがこれまで出会い、一夜を過ごしてきた女性は、上品ぶっており、性格も我が儘で、傲慢なところがあった。
身分にこだわる者が大半で、平民を見下していた。
静寂も苦手な者が多く、常に騒いでいた。
自分の思い通りにならないと、癇癪を起こされたこともあった。
「これまで一度だって、アリーシャを邪険に思ったことは無い。側に居ると、心地いいとさえ思えたんだ。
彼女が笑うと俺も嬉しくなって、彼女が泣くと俺も辛くなった。
先日の落雷の時も、涙が止まるまで側に居たいと思った。
彼女の涙が止まるなら、抱き締めるのも、手を握るのも、キスをするのも、何でもしてやりたいと思ったんだ……」
「あのな。オルキデア」
頭を掻きながら、クシャースラは話し出す。
「それを、人は好きって言うんだよ」
その言葉に驚いたように、オルキデアは顔を上げたのだった。
そう言って、自分の執務机に肘をついたクシャースラは呆れてため息を吐いた。
そんな親友を、ソファーに寝そべっていたオルキデアは無視したのだった。
次の日、アリーシャが起きる前に屋敷を出たオルキデアだったが、他に行く当てもなく、軍部内のクシャースラの執務室にいた。
昨日の昼過ぎまでは、実際に仕事があって自分の執務室に居た。
仕事が終わってからは、特にやることはなかったが、屋敷に帰って、アリーシャとどんな顔をして会えばいいのかわからず、また自分の執務室に居ると、代わりに仕事をしてくれているラカイユやアルフェラッツの視線が痛いので、親友の元を訪ねていた。
オルキデアの執務室とは違い、整頓が行き届いたクシャースラの執務室のソファーでしばらく寝そべっていると、とうとう親友が仕事を中断して、心配したように側にやって来たのだった。
「何かあったのか? お前らしくもない」
「……好きだって、告白されたんだ。それで、どう返事をしたらいいか、わからなかった」
「へぇ~。珍しいな。いつものように速攻で断らないなんて。そんなに美人だったのか。相手はどこの令嬢だ?」
「アリーシャだ」
「ああ、アリーシャ……って、アリーシャ嬢!?」
「そうだ」と肯定すると、クシャースラはまたため息を吐く。
「アリーシャ嬢から告白されたのか。それで何を迷っているんだ?」
「アリーシャには再三、俺よりいい男と結婚しろと言ってきた。
それなのに、俺と結婚したい、他の男は考えられないと言われた」
オルキデアはソファーから起き上がると、目を伏せた。
「どうして、俺なんかを選んだんだろうな。彼女は」
アリーシャの様な、可憐で器量の良い娘なら、自分より他にもっと似合う男がいるはずだ。
それなのに、何故彼女は自分を選んだのだろう。
オルキデアは名ばかりの貴族であり、借金は返済したもののまともな財産を持っていない。
軍での階級は少将であるが、取り立てて誇る様な功績もない。
それどころか、過去の経験から北部基地では使えない兵だというのに。
「それで、お前さんはどう思っているんだ?」
オルキデアの向かいに座りながら、クシャースラが尋ねてくる。
「アリーシャ嬢のことが好きなのか?」
「……わからない」
「わからない? 好きでもなんともないのか?」
「アリーシャはこれまで出会ったどの女性とも違う。世間知らずで、好奇心旺盛で、食べることが好きで。身分に関係なく優しくて、気取ったところもなく、自分の気持ちを素直に伝えてくるんだ」
これまでの環境もあるだろが、アリーシャは何にでも興味を持っていた。
どんなことにも「凄い」と言って感動した。
綺麗な花を見て「綺麗」と、美味しい食べ物を食べて「美味しい」と、素直に喜べる心を持っていた。
身分に関係なく、相手にきちんと礼を言い、遠慮しているのか、我が儘もなかなか言わない。
静寂も平気で、何も話さず、ただオルキデアの側に寄り添ってくれたこともあった。
オルキデアがこれまで出会い、一夜を過ごしてきた女性は、上品ぶっており、性格も我が儘で、傲慢なところがあった。
身分にこだわる者が大半で、平民を見下していた。
静寂も苦手な者が多く、常に騒いでいた。
自分の思い通りにならないと、癇癪を起こされたこともあった。
「これまで一度だって、アリーシャを邪険に思ったことは無い。側に居ると、心地いいとさえ思えたんだ。
彼女が笑うと俺も嬉しくなって、彼女が泣くと俺も辛くなった。
先日の落雷の時も、涙が止まるまで側に居たいと思った。
彼女の涙が止まるなら、抱き締めるのも、手を握るのも、キスをするのも、何でもしてやりたいと思ったんだ……」
「あのな。オルキデア」
頭を掻きながら、クシャースラは話し出す。
「それを、人は好きって言うんだよ」
その言葉に驚いたように、オルキデアは顔を上げたのだった。