アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
契約結婚を解消して欲しい
「アリーシャ」
「あっ、おかえりなさいませ。オルキデア様」
夕方になって、オルキデアは屋敷に帰って来た。
自室のソファーに座っていたアリーシャは、立ち上がると出迎えたのだった。
「ただいま……どこかに出掛けるつもりだったのか?」
アリーシャの傍らに置いていたカバンーー先程、着替えを詰めていた。を目敏く見つけたのか、オルキデアが眉を潜める。
「い、いえ……! 少し、荷物を整理していただけです」
「そうか……。話しがある。俺の部屋まで来てくれるか?」
「はい……」
オルキデアの後に続いて部屋を出ながら、アリーシャは思う。
(とうとう、聞けるんだ……)
先日の夜、アリーシャの告白に対して、オルキデアは「返事は待って欲しい」と返してきた。
ずっと気になっていた返事が聞けるとあって、安心出来る反面、どんな返事が聞けるのかと不安もあった。
廊下の窓に目を向けると、オレンジ色の夕陽が沈むところだった。
この屋敷で見る夕陽も、今日で最後かもしれないと思うと寂しさが募った。
「アリーシャ?」
廊下で立ち止まってしまったアリーシャを心配して、オルキデアも足を止める。
不思議そうな顔をした彼に「なんでもないです!」と返すと、また歩き出す。
そうして、オルキデアの後に続いて、アリーシャも部屋に入ったのだった。
部屋に入ると、机の前で振り返ったオルキデアと数歩の距離を空けて、アリーシャも立ち止まる。
机の上には、出掛けた時に買ってきたのか、オレンジ色のカーネーションが置いてあった。
カーネーションから視線を戻すと、オルキデアにじっと見つめられていたことに気づき、アリーシャは自分の顔が赤くなっていくのを感じたのだった。
「わざわざ、部屋まで来てもらってすまない。……どうしても、あの日、最初に言われた場所で返事をしたくてな」
「いえ」
その言葉で確信した。
やはり、「告白」の返事を聞かされるのだと。
「最初に、改めて母上が尋ねて来た時の礼を言いたい。……あの時は俺に付き合ってくれてありがとう」
「そんな。大したことではありません。私の方こそ、オルキデア様には度々、助けて頂きましたし……」
「それを言うなら俺の方だ。部屋の片付けから始まって、俺の事情にここまで付き合ってくれてありがとう。……君には感謝しかない」
口元を緩めて微笑を浮かべるオルキデアに、「そ、そんなことないです……」とますます顔が赤くなる。
「その上で、君にお願いがある」
「なんでしょうか……」
短いような、長いような、刹那が過ぎた後、ようやくオルキデアは口を開いたのだった。
「好きな女が出来た。俺との契約結婚を解消して欲しい」
息が出来なくなって、そのまま固まってしまう。
肩の力を抜いて息をすると、「わかりました……」と、なんとか声を絞り出す。
「そういう条件でしたので、私は大丈夫です」
この契約結婚をする際に、オルキデアと交わした約束の中にあった。
「オルキデアの母親が諦めるか、俺が別の想い人役を見つけるまで」と。
とうとう、その時がやってきたのだった。
「……相手が誰かを聞かないのか?」
聞き分けがいいからか、オルキデアは首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
「オルキデア様が好きになった方なら、間違いないと信じています」
「そんなことは……」
「そんなことありますよ」
胸が苦しくなって、涙がこみ上げてくる。
(私よりもきっとーー)
オルキデアが好きになった人ならーー大好きな人が好きになった相手なら間違いない。
その相手が私じゃないのが、ただ悔しいだけ。
アリーシャは大きく首を振った。
(泣くのは部屋に帰ってからでも出来る! 今は話を聞くの!)
そう自分に言い聞かせて、アリーシャは挫けそうになる心を奮い起こしたのだった。
「あっ、おかえりなさいませ。オルキデア様」
夕方になって、オルキデアは屋敷に帰って来た。
自室のソファーに座っていたアリーシャは、立ち上がると出迎えたのだった。
「ただいま……どこかに出掛けるつもりだったのか?」
アリーシャの傍らに置いていたカバンーー先程、着替えを詰めていた。を目敏く見つけたのか、オルキデアが眉を潜める。
「い、いえ……! 少し、荷物を整理していただけです」
「そうか……。話しがある。俺の部屋まで来てくれるか?」
「はい……」
オルキデアの後に続いて部屋を出ながら、アリーシャは思う。
(とうとう、聞けるんだ……)
先日の夜、アリーシャの告白に対して、オルキデアは「返事は待って欲しい」と返してきた。
ずっと気になっていた返事が聞けるとあって、安心出来る反面、どんな返事が聞けるのかと不安もあった。
廊下の窓に目を向けると、オレンジ色の夕陽が沈むところだった。
この屋敷で見る夕陽も、今日で最後かもしれないと思うと寂しさが募った。
「アリーシャ?」
廊下で立ち止まってしまったアリーシャを心配して、オルキデアも足を止める。
不思議そうな顔をした彼に「なんでもないです!」と返すと、また歩き出す。
そうして、オルキデアの後に続いて、アリーシャも部屋に入ったのだった。
部屋に入ると、机の前で振り返ったオルキデアと数歩の距離を空けて、アリーシャも立ち止まる。
机の上には、出掛けた時に買ってきたのか、オレンジ色のカーネーションが置いてあった。
カーネーションから視線を戻すと、オルキデアにじっと見つめられていたことに気づき、アリーシャは自分の顔が赤くなっていくのを感じたのだった。
「わざわざ、部屋まで来てもらってすまない。……どうしても、あの日、最初に言われた場所で返事をしたくてな」
「いえ」
その言葉で確信した。
やはり、「告白」の返事を聞かされるのだと。
「最初に、改めて母上が尋ねて来た時の礼を言いたい。……あの時は俺に付き合ってくれてありがとう」
「そんな。大したことではありません。私の方こそ、オルキデア様には度々、助けて頂きましたし……」
「それを言うなら俺の方だ。部屋の片付けから始まって、俺の事情にここまで付き合ってくれてありがとう。……君には感謝しかない」
口元を緩めて微笑を浮かべるオルキデアに、「そ、そんなことないです……」とますます顔が赤くなる。
「その上で、君にお願いがある」
「なんでしょうか……」
短いような、長いような、刹那が過ぎた後、ようやくオルキデアは口を開いたのだった。
「好きな女が出来た。俺との契約結婚を解消して欲しい」
息が出来なくなって、そのまま固まってしまう。
肩の力を抜いて息をすると、「わかりました……」と、なんとか声を絞り出す。
「そういう条件でしたので、私は大丈夫です」
この契約結婚をする際に、オルキデアと交わした約束の中にあった。
「オルキデアの母親が諦めるか、俺が別の想い人役を見つけるまで」と。
とうとう、その時がやってきたのだった。
「……相手が誰かを聞かないのか?」
聞き分けがいいからか、オルキデアは首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
「オルキデア様が好きになった方なら、間違いないと信じています」
「そんなことは……」
「そんなことありますよ」
胸が苦しくなって、涙がこみ上げてくる。
(私よりもきっとーー)
オルキデアが好きになった人ならーー大好きな人が好きになった相手なら間違いない。
その相手が私じゃないのが、ただ悔しいだけ。
アリーシャは大きく首を振った。
(泣くのは部屋に帰ってからでも出来る! 今は話を聞くの!)
そう自分に言い聞かせて、アリーシャは挫けそうになる心を奮い起こしたのだった。