アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「そう言われると不安になるな……。だが、君が言うならそう思えてくる。
いつだって、君は相手を気遣ってくれた。敵だった俺も気遣ってくれて……」
「私もそうです。いつだって、貴方は私を気遣ってくれました。
不安にならないように励ましてくれて、傍についていてくれて、可愛いらしい洋服やアクセサリー、美味しいお菓子を贈ってくれて……。
今日だって、テラス席を用意してくださって、お庭でお茶とプリンを片手に読書が出来て、至福の時を過ごせました。
ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」
屋敷を出て、一人で生きていくことになっても、オルキデアとの思い出があれば生きていける。
彼から与えられたモノ、教えられたモノを胸に、どんな困難にも立ち向かって行けるような気さえしたのだった。
「それでは、私はこれで失礼します。この屋敷を出ようと思っていたので……」
「出るだと、どうして!?」
いつになく慌てふためくオルキデアに首を傾げつつ口を開く。
「オルキデア様が好きな相手が出来たということは、今後、結婚して、この屋敷に住む可能性だってありますよね? それなら私は邪魔になるので、この屋敷を出ようかと……」
オルキデアの後ろにあるオレンジ色のカーネーション。
オレンジ色のカーネーションには、「純粋な愛」や「貴方を愛しています」といった花言葉がある。
つまり、これからオルキデアは「好きになった女性」にカーネーションを渡しに行くのだろう。
もし、結婚することになったら、仮初めの関係だったとはいえ、アリーシャは邪魔になる。
それなら、早い内にここを出て行った方がいいと思ったのだった。
アリーシャの言葉に額を押さえると、「なんだそんなことか」とオルキデアは安心したようだった。
「気が変わって、俺が嫌いになったから、ここを出て行くのかと思ったぞ」
「そんなことはありません! オルキデア様よりカッコいい男性なんていません!」
むきになって言い返すと、「嬉しいような、恥ずかしい気持ちになるな」と苦笑される。
「それでは、今度こそ失礼します」
一礼して背を向けると、再び内側からこみ上げてくるものがある。
声が漏れそうになって、ぐっと身体に力を入れて歩き出すと、後ろでガサリと紙が擦れる様な音が聞こえてきた。
「アリーシャ」
呼び止められて振り返ると、目の前に鮮やかなオレンジが広がっていた。
それが机の上に置いてあったカーネーションだと気づいた時には、オルキデアは次の言葉を口にしていたのだった。
「俺と結婚して欲しい」
聞き間違いかと思い、「えっ……」と声が漏れてしまう。
「でも、今、解消して欲しいって……」
「それは契約結婚だ。俺がして欲しいのは、契約でも、一時的でもなければ、目的も、利害関係もない。愛し合った男女がする結婚だ」
カーネーションから顔を上げると、そこには熱を帯びた目で見つめるオルキデアの姿があった。
「本当は……改めて告白されたあの晩、すぐにでも返事をしたかった。
ただ、それだと男として面目が立たないだろう……嬉しくはあったが」
オルキデアの顔が赤く見えるのは、夕陽のせいだけではないだろう。
アリーシャは瞬きを繰り返すと、じっとオルキデアの言葉に聞き入る。
「もっと雰囲気があって、君が喜ぶ様な用意もしたかった。こういうのは、一生に一度だからな」
いつだって、君は相手を気遣ってくれた。敵だった俺も気遣ってくれて……」
「私もそうです。いつだって、貴方は私を気遣ってくれました。
不安にならないように励ましてくれて、傍についていてくれて、可愛いらしい洋服やアクセサリー、美味しいお菓子を贈ってくれて……。
今日だって、テラス席を用意してくださって、お庭でお茶とプリンを片手に読書が出来て、至福の時を過ごせました。
ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」
屋敷を出て、一人で生きていくことになっても、オルキデアとの思い出があれば生きていける。
彼から与えられたモノ、教えられたモノを胸に、どんな困難にも立ち向かって行けるような気さえしたのだった。
「それでは、私はこれで失礼します。この屋敷を出ようと思っていたので……」
「出るだと、どうして!?」
いつになく慌てふためくオルキデアに首を傾げつつ口を開く。
「オルキデア様が好きな相手が出来たということは、今後、結婚して、この屋敷に住む可能性だってありますよね? それなら私は邪魔になるので、この屋敷を出ようかと……」
オルキデアの後ろにあるオレンジ色のカーネーション。
オレンジ色のカーネーションには、「純粋な愛」や「貴方を愛しています」といった花言葉がある。
つまり、これからオルキデアは「好きになった女性」にカーネーションを渡しに行くのだろう。
もし、結婚することになったら、仮初めの関係だったとはいえ、アリーシャは邪魔になる。
それなら、早い内にここを出て行った方がいいと思ったのだった。
アリーシャの言葉に額を押さえると、「なんだそんなことか」とオルキデアは安心したようだった。
「気が変わって、俺が嫌いになったから、ここを出て行くのかと思ったぞ」
「そんなことはありません! オルキデア様よりカッコいい男性なんていません!」
むきになって言い返すと、「嬉しいような、恥ずかしい気持ちになるな」と苦笑される。
「それでは、今度こそ失礼します」
一礼して背を向けると、再び内側からこみ上げてくるものがある。
声が漏れそうになって、ぐっと身体に力を入れて歩き出すと、後ろでガサリと紙が擦れる様な音が聞こえてきた。
「アリーシャ」
呼び止められて振り返ると、目の前に鮮やかなオレンジが広がっていた。
それが机の上に置いてあったカーネーションだと気づいた時には、オルキデアは次の言葉を口にしていたのだった。
「俺と結婚して欲しい」
聞き間違いかと思い、「えっ……」と声が漏れてしまう。
「でも、今、解消して欲しいって……」
「それは契約結婚だ。俺がして欲しいのは、契約でも、一時的でもなければ、目的も、利害関係もない。愛し合った男女がする結婚だ」
カーネーションから顔を上げると、そこには熱を帯びた目で見つめるオルキデアの姿があった。
「本当は……改めて告白されたあの晩、すぐにでも返事をしたかった。
ただ、それだと男として面目が立たないだろう……嬉しくはあったが」
オルキデアの顔が赤く見えるのは、夕陽のせいだけではないだろう。
アリーシャは瞬きを繰り返すと、じっとオルキデアの言葉に聞き入る。
「もっと雰囲気があって、君が喜ぶ様な用意もしたかった。こういうのは、一生に一度だからな」