アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
片付け
アリーシャに薬を盛っていた兵を捕まえた翌日の昼近く。
ようやく、今回の件の後始末と、捕らえた兵に関する引き継ぎを終えたオルキデアは、疲労した身体を引きずるようにして執務室に戻って来たのだった。
「疲れたな……」
とにかく頭が痛かった。
徹夜が関係しているだろうが、それだけでなく、疲労困憊になる原因が他にあった。
昨晩、捕らえた兵である。
結局、あの兵はオルキデアたちがどれだけ言っても、反省をする様子がなかった。
これ以上、兵と話すのは時間の無駄と判断すると、この基地に常駐している将官に、兵の尋問と、共犯の見張りの割り出しを任せた。そうして、一度、仮眠をしに執務室に戻って来たのだった。
執務室の扉の前で鍵を開けようとすると、室内からガサゴソと物音が聞こえてきた。
(泥棒か……?)
軍の基地とはいえ、泥棒が侵入しないとは限らない。
敵国の間諜や、昨夜の兵の仲間が報復に来た可能性もある。
オルキデアは息を整えると、腰に吊るしている銃に触れる。
銃を掴んで引き抜くと、一気に扉を開け放ったのだった。
「ラナンキュラス様……?」
扉を開け放ち、銃口を向けた先にいたのは、男性捕虜用の作業服に着替えたアリーシャだった。
空の酒瓶を持ったアリーシャは、オルキデアが向けている銃口に気がつくと、真っ青な顔になった。
オルキデアは慌てて銃口を下げると、元通り腰に吊るしたのだった。
「すまない。泥棒か間諜と勘違いした。しかし、何をやっているんだ?」
「寝てばかりいても暇だったのと、お世話になってばかりも悪いので、せめて片付けをしようかと……」
サイズが合わないのか、ぶかぶかの上着とズボンの服の袖を何重にも折り返して、作業服を着ているアリーシャは、申し訳なさそうに目を伏せたのだった。
昨夜、アリーシャが使っている部屋にオルキデアが潜むのに当たって、アリーシャにはオルキデアの執務室に併設している仮眠室に移動してもらっていた。
他の部屋よりは、オルキデアの執務室の方がいくらか安全なのと、アリーシャの部屋から離れているからというのが理由であった。
万が一、兵が逃亡しても、人質に取られるなどして、これ以上この件に巻き込まないようにという配慮もあった。
昨夜は、不審な動きをしないか見張りも兼ねて、信頼の置ける部下と医師に付き添いを頼んでいたが、二人は仕事に戻ったのだろう。
アリーシャを一人きりにしたのは問題だが、付き添ってくれたことには感謝をせねばならない。
「別に気にする必要はないさ。それより、まだ怪我が回復していないだろう。ベッドを使っていいから、俺に構わず休め」
「でも、そうしたら……。ラナンキュラス様が休めないですよね。昨夜はお疲れでしょうし……」
「俺のことは気にしなくていい。この部屋で寝るさ」
そうは言っても、机もソファーも床さえも、書類や兵法書、服や酒瓶で埋まっていた。
自分一人なら、適当に物を退かせば寝れるだろう。
そういうつもりで言ったつもりだったが、なぜかアリーシャが「そんなのダメです!」と声を上げたのだった。
ようやく、今回の件の後始末と、捕らえた兵に関する引き継ぎを終えたオルキデアは、疲労した身体を引きずるようにして執務室に戻って来たのだった。
「疲れたな……」
とにかく頭が痛かった。
徹夜が関係しているだろうが、それだけでなく、疲労困憊になる原因が他にあった。
昨晩、捕らえた兵である。
結局、あの兵はオルキデアたちがどれだけ言っても、反省をする様子がなかった。
これ以上、兵と話すのは時間の無駄と判断すると、この基地に常駐している将官に、兵の尋問と、共犯の見張りの割り出しを任せた。そうして、一度、仮眠をしに執務室に戻って来たのだった。
執務室の扉の前で鍵を開けようとすると、室内からガサゴソと物音が聞こえてきた。
(泥棒か……?)
軍の基地とはいえ、泥棒が侵入しないとは限らない。
敵国の間諜や、昨夜の兵の仲間が報復に来た可能性もある。
オルキデアは息を整えると、腰に吊るしている銃に触れる。
銃を掴んで引き抜くと、一気に扉を開け放ったのだった。
「ラナンキュラス様……?」
扉を開け放ち、銃口を向けた先にいたのは、男性捕虜用の作業服に着替えたアリーシャだった。
空の酒瓶を持ったアリーシャは、オルキデアが向けている銃口に気がつくと、真っ青な顔になった。
オルキデアは慌てて銃口を下げると、元通り腰に吊るしたのだった。
「すまない。泥棒か間諜と勘違いした。しかし、何をやっているんだ?」
「寝てばかりいても暇だったのと、お世話になってばかりも悪いので、せめて片付けをしようかと……」
サイズが合わないのか、ぶかぶかの上着とズボンの服の袖を何重にも折り返して、作業服を着ているアリーシャは、申し訳なさそうに目を伏せたのだった。
昨夜、アリーシャが使っている部屋にオルキデアが潜むのに当たって、アリーシャにはオルキデアの執務室に併設している仮眠室に移動してもらっていた。
他の部屋よりは、オルキデアの執務室の方がいくらか安全なのと、アリーシャの部屋から離れているからというのが理由であった。
万が一、兵が逃亡しても、人質に取られるなどして、これ以上この件に巻き込まないようにという配慮もあった。
昨夜は、不審な動きをしないか見張りも兼ねて、信頼の置ける部下と医師に付き添いを頼んでいたが、二人は仕事に戻ったのだろう。
アリーシャを一人きりにしたのは問題だが、付き添ってくれたことには感謝をせねばならない。
「別に気にする必要はないさ。それより、まだ怪我が回復していないだろう。ベッドを使っていいから、俺に構わず休め」
「でも、そうしたら……。ラナンキュラス様が休めないですよね。昨夜はお疲れでしょうし……」
「俺のことは気にしなくていい。この部屋で寝るさ」
そうは言っても、机もソファーも床さえも、書類や兵法書、服や酒瓶で埋まっていた。
自分一人なら、適当に物を退かせば寝れるだろう。
そういうつもりで言ったつもりだったが、なぜかアリーシャが「そんなのダメです!」と声を上げたのだった。