アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
万華鏡と一輪挿し
住人に見つからないように集合住宅から出た二人は、人混みに流されるようにして、百貨店の裏手にある広場にやって来た。
予想通りと言うべきか、広場には所狭しと食べ物を扱った屋台が並び、噴水周りには椅子やテーブルなどの休憩スペースが出来ていた。
休憩スペースを挟んだ反対側には、各国の雑貨を扱った出店が、また所狭しと並んでいたのだった。
「やはり、広場は混んでいるな」
人気の屋台には長蛇の列が出来ており、休憩スペースも家族や友人、恋人同士で利用する者たちで混雑していたのだった。
「こんなに人が集まって……」
オルキデアの腕にしがみつくアリーシャも、驚きで言葉が出ないようであった。
楽しそうに談笑する恋人同士、次はどの屋台に並ぶか話し合う友人同士、遊び足りないと泣き叫ぶ幼子を抱えて広場から去っていく若い夫婦。
王都の内外から集まった多くの人々が、二人とすれ違い、また追い越して行ったのだった。
「先にテーブルを確保した方が良さそうだ。この様子だと、空いてもすぐに埋まるだろう」
二人が話している側から、休憩スペースにはひっきりなしに人がやって来て、食べ終わっては去って行き、空いているテーブルを確保しては、腰を下ろしていた。
「そうですね……」
休憩スペースにやって来た二人は、キョロキョロと辺りを見回して空席を探す。
ようやくテーブル席が空くと、他の人に取られない内にすぐに確保したのだった。
「俺が買って来よう。何がいい?」
「何があるのかわからないので……。あっ、さっき屋上から見た、串に刺したパンみたいなものが食べたいです。出来れば、温かい飲み物も」
「買ってくる。お前はここで待っているんだ。いいな」
アリーシャが返事をすると、オルキデアは屋台へと向かう。
人混みを掻き分けて、屋台を見て行くと、おそらくアリーシャが言っていたものと同じ、串にパンを刺したものを見つける。
こってりとした甘辛そうなソースと薄黄色のマヨネーズ、青い海苔や赤い生姜がついたそれを一個購入して、ついでに自分用にソーセージを串に刺したものも一個購入する。
油紙に包んで袋に入れてもらうと、代金を支払って足早に次の屋台を探す。
飲み物の屋台はいくつかあったので、なるべく人が並んでいない屋台を選んで、二人分の飲み物を購入する。 勿論、自分はコーヒーで、アリーシャは紅茶にした。
テーブルに戻りながら、ふと甘い匂いにつられて別の屋台を見ると、棒に刺した果物を飴でコーティングしたフルーツ飴を見つけた。
アリーシャの喜ぶ顔が浮かんだので、その中から一つ購入して、同じ袋に入れたのだった。
(どんな顔をするかな)
待ちくたびれていじけていなければいいが、と考えながら、足早にテーブル席に戻ると、アリーシャが見知らぬ男性三人に話しかけられているのが、遠目からでも見えた。
不安になってテーブルを避けながら近づくと、話し声が聞こえてきたのだった。
「ねぇねぇ。一人? オレたちと一緒に遊ばない?」
「い、いえ。私は人を待っていますので……」
「そんなこと言っていないで。待っている人はどこにいるの? もう帰っちゃったんじゃない?」
「そ、そんなはずはありません……!」
「いいから、いいから。暇なんでしょう。オレたちと祭りを回ろうよ」
男の一人がアリーシャの手首を掴んだ。
「は、離して下さい!」
「なに言ってるの? 俺たちは無理強いなんてしてないし」
男たちに引っ張られそうになって、テーブルにしがみついて抵抗するアリーシャの姿に、頭の中が真っ白になる。
テーブルにそっと近づくと、男たちの背後に回る。
「うちの妻に何か?」
怒気を込めて低い声で話しかけると、男たちはビクリと振り返ったのだった。
予想通りと言うべきか、広場には所狭しと食べ物を扱った屋台が並び、噴水周りには椅子やテーブルなどの休憩スペースが出来ていた。
休憩スペースを挟んだ反対側には、各国の雑貨を扱った出店が、また所狭しと並んでいたのだった。
「やはり、広場は混んでいるな」
人気の屋台には長蛇の列が出来ており、休憩スペースも家族や友人、恋人同士で利用する者たちで混雑していたのだった。
「こんなに人が集まって……」
オルキデアの腕にしがみつくアリーシャも、驚きで言葉が出ないようであった。
楽しそうに談笑する恋人同士、次はどの屋台に並ぶか話し合う友人同士、遊び足りないと泣き叫ぶ幼子を抱えて広場から去っていく若い夫婦。
王都の内外から集まった多くの人々が、二人とすれ違い、また追い越して行ったのだった。
「先にテーブルを確保した方が良さそうだ。この様子だと、空いてもすぐに埋まるだろう」
二人が話している側から、休憩スペースにはひっきりなしに人がやって来て、食べ終わっては去って行き、空いているテーブルを確保しては、腰を下ろしていた。
「そうですね……」
休憩スペースにやって来た二人は、キョロキョロと辺りを見回して空席を探す。
ようやくテーブル席が空くと、他の人に取られない内にすぐに確保したのだった。
「俺が買って来よう。何がいい?」
「何があるのかわからないので……。あっ、さっき屋上から見た、串に刺したパンみたいなものが食べたいです。出来れば、温かい飲み物も」
「買ってくる。お前はここで待っているんだ。いいな」
アリーシャが返事をすると、オルキデアは屋台へと向かう。
人混みを掻き分けて、屋台を見て行くと、おそらくアリーシャが言っていたものと同じ、串にパンを刺したものを見つける。
こってりとした甘辛そうなソースと薄黄色のマヨネーズ、青い海苔や赤い生姜がついたそれを一個購入して、ついでに自分用にソーセージを串に刺したものも一個購入する。
油紙に包んで袋に入れてもらうと、代金を支払って足早に次の屋台を探す。
飲み物の屋台はいくつかあったので、なるべく人が並んでいない屋台を選んで、二人分の飲み物を購入する。 勿論、自分はコーヒーで、アリーシャは紅茶にした。
テーブルに戻りながら、ふと甘い匂いにつられて別の屋台を見ると、棒に刺した果物を飴でコーティングしたフルーツ飴を見つけた。
アリーシャの喜ぶ顔が浮かんだので、その中から一つ購入して、同じ袋に入れたのだった。
(どんな顔をするかな)
待ちくたびれていじけていなければいいが、と考えながら、足早にテーブル席に戻ると、アリーシャが見知らぬ男性三人に話しかけられているのが、遠目からでも見えた。
不安になってテーブルを避けながら近づくと、話し声が聞こえてきたのだった。
「ねぇねぇ。一人? オレたちと一緒に遊ばない?」
「い、いえ。私は人を待っていますので……」
「そんなこと言っていないで。待っている人はどこにいるの? もう帰っちゃったんじゃない?」
「そ、そんなはずはありません……!」
「いいから、いいから。暇なんでしょう。オレたちと祭りを回ろうよ」
男の一人がアリーシャの手首を掴んだ。
「は、離して下さい!」
「なに言ってるの? 俺たちは無理強いなんてしてないし」
男たちに引っ張られそうになって、テーブルにしがみついて抵抗するアリーシャの姿に、頭の中が真っ白になる。
テーブルにそっと近づくと、男たちの背後に回る。
「うちの妻に何か?」
怒気を込めて低い声で話しかけると、男たちはビクリと振り返ったのだった。