アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「買い物されたんですか?」
「向こうの出店で、オルキデア様に万華鏡を買って頂いたんです!」
アリーシャが嬉しそうに万華鏡を見せると、セシリアは笑みを返したのだった。
「セシリア、クシャースラは?」
「今年のクシャ様は貴族街の警備担当なんです。おそらく、日付が変わるまで解放されないかと」
どうやら、今回はクシャースラの部隊が、貴族街の警備というハズレくじを引かされたらしい。
貴族街は出店や屋台が無い分、乱痴気騒ぎや酔っ払いによる喧嘩も滅多に起こらないので警備自体は暇だが、その代わりにパレードを通過した後の片付けを手伝わされることがある。
平民街は平民街の住民たちが率先して祭りの用意や片付けをやるが、貴族街は出資している各貴族の使用人たちが行う。
だが使用人たちだけでは、その日の内に片付けが終わらないので、片付けが間に合わなかった時に駆り出されるのが、若手の警察官や軍の新兵であった。
クシャースラは新兵ではないので、片付けに参加する必要はないが、警察と連携して現場の指揮を執る為に、片付けの現場に立ち会わなければならなかった。
現場の指揮といっても、主に新兵たちがさぼらないように、目を光らせる為だけにいると言っても過言ではない。
勿論、クシャースラ以外の将官でもいいのだが、身分主義の国だけあって、平民出身のクシャースラにこういった面倒な仕事が回されがちであった。
本人もそれを理解しているので、周囲との関係を穏便に済ませる為に、引き受けざるを得ないらしい。
このことに関しても、よくクシャースラが酔っ払った時に、愚痴として聞かさるので、オルキデアも親友の難しい立場には同情しており、手伝える時は手伝うようにしていたのだった。
「今回のはずれくじは、あっちが引かされたか……」
「ふふふ。今朝のクシャ様も、嫌々出掛けられました。私に抱きしめてもらわないと仕事に行けないって言って」
「子供か。全く……」
オルキデアたちが話している間、万華鏡をハンドバックにしまったアリーシャは、出店の花を眺めているようだった。
アリーシャの視線の先に気付いたセシリアが「どうぞゆっくりご覧になって下さい」と声を掛けたのだった。
「綺麗なお花ばかりですね」
「ありがとうございます。綺麗に咲いたものを選んだんです」
出店の前に並んだ小振りな植木鉢に植えられているのは、パンジーやゼラニウムといった可憐な花々であった。
他にも数輪の花を束ねた小さな花束や、プリザーブドフラワーで作ったと思しき小物も並べられていたのだった。
「気に入ったものがあれば買うぞ」
「ありがとうございます。でも、今度は自分で買います。私にもオルキデア様から頂いたお小遣いがあるので」
少額ではあるが、アリーシャにはお金を渡している。
これから一緒に暮らしていく中で、アリーシャにはお金の扱い方や、一人での買い物に慣れてもらわなければならない。
オルキデア自身もずっと休暇を取って、アリーシャの側についている訳にいかない。
いずれはオルキデアが仕事で不在にしている間、アリーシャに屋敷を任せる日も来るだろう。
本人は「買い物ぐらいしたことがあります。大丈夫です」言っていたが、果たして本当に大丈夫なのか不安もあった。
来るべき日に備えてーーオルキデアが長期間の遠征に出てしまう日に備えて、アリーシャが一人で生活していけるように、用意をしておきたかった。
「向こうの出店で、オルキデア様に万華鏡を買って頂いたんです!」
アリーシャが嬉しそうに万華鏡を見せると、セシリアは笑みを返したのだった。
「セシリア、クシャースラは?」
「今年のクシャ様は貴族街の警備担当なんです。おそらく、日付が変わるまで解放されないかと」
どうやら、今回はクシャースラの部隊が、貴族街の警備というハズレくじを引かされたらしい。
貴族街は出店や屋台が無い分、乱痴気騒ぎや酔っ払いによる喧嘩も滅多に起こらないので警備自体は暇だが、その代わりにパレードを通過した後の片付けを手伝わされることがある。
平民街は平民街の住民たちが率先して祭りの用意や片付けをやるが、貴族街は出資している各貴族の使用人たちが行う。
だが使用人たちだけでは、その日の内に片付けが終わらないので、片付けが間に合わなかった時に駆り出されるのが、若手の警察官や軍の新兵であった。
クシャースラは新兵ではないので、片付けに参加する必要はないが、警察と連携して現場の指揮を執る為に、片付けの現場に立ち会わなければならなかった。
現場の指揮といっても、主に新兵たちがさぼらないように、目を光らせる為だけにいると言っても過言ではない。
勿論、クシャースラ以外の将官でもいいのだが、身分主義の国だけあって、平民出身のクシャースラにこういった面倒な仕事が回されがちであった。
本人もそれを理解しているので、周囲との関係を穏便に済ませる為に、引き受けざるを得ないらしい。
このことに関しても、よくクシャースラが酔っ払った時に、愚痴として聞かさるので、オルキデアも親友の難しい立場には同情しており、手伝える時は手伝うようにしていたのだった。
「今回のはずれくじは、あっちが引かされたか……」
「ふふふ。今朝のクシャ様も、嫌々出掛けられました。私に抱きしめてもらわないと仕事に行けないって言って」
「子供か。全く……」
オルキデアたちが話している間、万華鏡をハンドバックにしまったアリーシャは、出店の花を眺めているようだった。
アリーシャの視線の先に気付いたセシリアが「どうぞゆっくりご覧になって下さい」と声を掛けたのだった。
「綺麗なお花ばかりですね」
「ありがとうございます。綺麗に咲いたものを選んだんです」
出店の前に並んだ小振りな植木鉢に植えられているのは、パンジーやゼラニウムといった可憐な花々であった。
他にも数輪の花を束ねた小さな花束や、プリザーブドフラワーで作ったと思しき小物も並べられていたのだった。
「気に入ったものがあれば買うぞ」
「ありがとうございます。でも、今度は自分で買います。私にもオルキデア様から頂いたお小遣いがあるので」
少額ではあるが、アリーシャにはお金を渡している。
これから一緒に暮らしていく中で、アリーシャにはお金の扱い方や、一人での買い物に慣れてもらわなければならない。
オルキデア自身もずっと休暇を取って、アリーシャの側についている訳にいかない。
いずれはオルキデアが仕事で不在にしている間、アリーシャに屋敷を任せる日も来るだろう。
本人は「買い物ぐらいしたことがあります。大丈夫です」言っていたが、果たして本当に大丈夫なのか不安もあった。
来るべき日に備えてーーオルキデアが長期間の遠征に出てしまう日に備えて、アリーシャが一人で生活していけるように、用意をしておきたかった。