アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
アリーシャの正体と親友と
次の日の朝、部下が用意してくれた朝食を済ませると、早速、アリーシャは片付けに取り掛かった。
汚れてもいいように、女性捕虜用の作業服に着替えて、髪を一つにまとめると、執務室から片付けを始めたようだった。
「アリーシャ」
食後のコーヒーを飲みながら、電子メールのチェックをしていたオルキデアは、とあるメールを読み終えると、アリーシャを呼び出す。
「はい?」
「今日の十一時過ぎに来客がある。悪いが、それまでには片付けをひと段落してくれないか?」
「わかりました」
時刻はまだ九時を少し過ぎたばかりであり、まだ時間があった。
アリーシャが部屋を片付けている間、こっちも溜まっていた仕事を片付けるとするか。
オルキデアがコーヒーを飲み終えたのを見計らったかのように、アリーシャが声を掛けてきた。
「あの……? オルキデア様」
「ん? どうした?」
「来客がお見えになる時は、私は席を外した方がいいでしょうか? 仮眠室とかに……」
どうやら、自分の姿を見られると、オルキデアにとって不都合があると考えたのだろう。
オルキデアは「その必要はない」と、答えた。
「それよりも、アリーシャにも会わせたい人なんだ」
「私にも?」
「ああ、きっと俺たちの力になってくれ……」
そこまで言いかけたところで、廊下で人が言い争う声が聞こえてきた。
「いいから通せって!」
「ですが、まだ少将に確認をしなくては……」
「大丈夫だ。あっちから来るように言ってきたんだからな」
「あっ! お待ち下さい!!」
ドタドタという足音と共に、その声は、だんだんと執務室に近づいているようだった。
「なんだ?」
オルキデアが眉をひそめていると、扉が勢いよく開いたのだった。
「オルキデア!」
入って来たのは、オルキデアと同じ年頃、同じ階級の軍人だった。
輝く様な鮮やかな金色の短い髪を頭に撫でつけ、脇にボストンバックを持った男は、灰色の瞳で室内を見渡すと、書類と酒瓶の山を掻き分けて、オルキデアが座る執務机に近づいたのだった。
「クシャースラ。約束の時間より、随分と早いが」
「珍しく親友からメールを貰ったから、頼まれた物を持って、急いで駆けつけたというのに……。水臭いな」
軍人ーークシャースラは、やれやれと肩を竦めた。
「持ってきて欲しいものがあると言っただけだ。約束の時間より、二時間も早く来いとは言っていない」
「せっかくだから、部屋も片付けてやろうと思って早めに来たんだよ。さぞかし汚いだろうと……あれ? そこまで汚くない?」
部屋を見渡していたクシャースラは、とある一点で吸い寄せられるようにじっと見つめる。
視線の先にいたのは、一歩身を引いていたアリーシャだった。
「おい、オルキデア……」
口を開いたクシャースラに対して、先に動いたのはアリーシャだった。
オルキデアが頷くと、そっとクシャースラに近づいたのだった。
「おはようございます。初めまして。アリーシャと申します」
シュタルクヘルト語で話しながら、アリーシャは一礼をすると、花が咲く様に笑みを浮かべたのだった。
汚れてもいいように、女性捕虜用の作業服に着替えて、髪を一つにまとめると、執務室から片付けを始めたようだった。
「アリーシャ」
食後のコーヒーを飲みながら、電子メールのチェックをしていたオルキデアは、とあるメールを読み終えると、アリーシャを呼び出す。
「はい?」
「今日の十一時過ぎに来客がある。悪いが、それまでには片付けをひと段落してくれないか?」
「わかりました」
時刻はまだ九時を少し過ぎたばかりであり、まだ時間があった。
アリーシャが部屋を片付けている間、こっちも溜まっていた仕事を片付けるとするか。
オルキデアがコーヒーを飲み終えたのを見計らったかのように、アリーシャが声を掛けてきた。
「あの……? オルキデア様」
「ん? どうした?」
「来客がお見えになる時は、私は席を外した方がいいでしょうか? 仮眠室とかに……」
どうやら、自分の姿を見られると、オルキデアにとって不都合があると考えたのだろう。
オルキデアは「その必要はない」と、答えた。
「それよりも、アリーシャにも会わせたい人なんだ」
「私にも?」
「ああ、きっと俺たちの力になってくれ……」
そこまで言いかけたところで、廊下で人が言い争う声が聞こえてきた。
「いいから通せって!」
「ですが、まだ少将に確認をしなくては……」
「大丈夫だ。あっちから来るように言ってきたんだからな」
「あっ! お待ち下さい!!」
ドタドタという足音と共に、その声は、だんだんと執務室に近づいているようだった。
「なんだ?」
オルキデアが眉をひそめていると、扉が勢いよく開いたのだった。
「オルキデア!」
入って来たのは、オルキデアと同じ年頃、同じ階級の軍人だった。
輝く様な鮮やかな金色の短い髪を頭に撫でつけ、脇にボストンバックを持った男は、灰色の瞳で室内を見渡すと、書類と酒瓶の山を掻き分けて、オルキデアが座る執務机に近づいたのだった。
「クシャースラ。約束の時間より、随分と早いが」
「珍しく親友からメールを貰ったから、頼まれた物を持って、急いで駆けつけたというのに……。水臭いな」
軍人ーークシャースラは、やれやれと肩を竦めた。
「持ってきて欲しいものがあると言っただけだ。約束の時間より、二時間も早く来いとは言っていない」
「せっかくだから、部屋も片付けてやろうと思って早めに来たんだよ。さぞかし汚いだろうと……あれ? そこまで汚くない?」
部屋を見渡していたクシャースラは、とある一点で吸い寄せられるようにじっと見つめる。
視線の先にいたのは、一歩身を引いていたアリーシャだった。
「おい、オルキデア……」
口を開いたクシャースラに対して、先に動いたのはアリーシャだった。
オルキデアが頷くと、そっとクシャースラに近づいたのだった。
「おはようございます。初めまして。アリーシャと申します」
シュタルクヘルト語で話しながら、アリーシャは一礼をすると、花が咲く様に笑みを浮かべたのだった。