アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
「アリーシャ。実は君を国に帰そうと思う」
「えっ……」
腕の中からオルキデアを見上げるアリーシャが固まる。
「このまま、この部屋に置いていても、いずれは君の正体がバレてしまう。
そうなれば、軍に、国に、その存在を利用されてしまうだろう。
そうなる前に君を国に帰す」
オルキデアは昼間にクシャースラに説明した方法を説明する。
アリーシャは黙って聞いていたが、やがてオルキデアから離れると、「嫌です!」と首を振った。
「私はあんな国に帰りたくありません」
「しかし、このままここに居ても、君を捕虜として扱うしかない。
いずれは独房に入って、国に強制送還されるのを待つしかないぞ」
「オルキデア様のご迷惑になるのなら、それでも構いません。どんな扱いを受けても」
「アリーシャ……」
「ようやく、あの家を……国を出られたんです。父は体裁を保つ為に、私が屋敷から出て自立する事も、働きに行く事も禁じていました。
だから、私は父の迷惑にならないように……存在しないように、息を潜めて生きていくしかなかったんです」
アリーシャーーアリサがシュタルクヘルト家に居た頃、元王族の血を引く資産家の娘が、外に出て働くなど言語道断と、父は使用人を介して、アリサが市井で働く事を許してくれなかった。
家を出て一人で生きていきたいと言った事もあったが、家を出るなら、二度とシュタルクヘルトを名乗る事も許さず、生活に必要な支援もしないと、これも使用人を介して言われたのだった。
アリサは別に構わなかったが、アリサ付きの使用人がそれを止めてきた。
シュタルクヘルトの名を捨てて、家を出ても、シュタルクヘルトの国内はどこに行っても父の息がかかっており、生きづらいと。
ーーもし、一人で生きるなら、国外でなければならないとも。
「国外に出るなら、中立国であるハルモニアが無難だと思っていました。ハルモニアなら、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も通じるので」
シュタルクヘルトとペルフェクトのどちらにも与せずに、中立国を貫いているハルモニアなら、元王族の血を引くアリーシャでも亡命者として受け入れてくれるだろう。
「それなら、ハルモニアに連れて行こう。国に帰るのも、そこで生きるのも、好きに選ぶといい」
それならいいだろうと、オルキデアは言外に言ったが、アリーシャは納得しなかった。
ただ、嫌々というように首を振ったのだった。
「わ、私は……この国で、オルキデア様の側で生きていたいんです……」
「俺の? なんで、また……」
「オルキデア様の側に居る時が、一番心地良かったんです。……安心出来たんです」
「……俺は君を監視していたに過ぎないぞ」
オルキデアは眉を顰める。アリーシャに気に入られるような事を、自分はしただろうか。
「でも、私が最初に目を覚ました時も、薬を盛られた時も、薬を盛った犯人を捕まえる時も、ここに来る時も、オルキデア様は気にかけてくださいました。それが嬉しかったんです。……堪らなく。だから、それに報いたい。恩返しをしたいんです」
「あの時も言ったが、俺は、俺が保護した捕虜に責任を持っただけに過ぎない。
それに、君がただのシュタルクヘルト人じゃないって、最初から気付いていたからな」
「えっ……」
腕の中からオルキデアを見上げるアリーシャが固まる。
「このまま、この部屋に置いていても、いずれは君の正体がバレてしまう。
そうなれば、軍に、国に、その存在を利用されてしまうだろう。
そうなる前に君を国に帰す」
オルキデアは昼間にクシャースラに説明した方法を説明する。
アリーシャは黙って聞いていたが、やがてオルキデアから離れると、「嫌です!」と首を振った。
「私はあんな国に帰りたくありません」
「しかし、このままここに居ても、君を捕虜として扱うしかない。
いずれは独房に入って、国に強制送還されるのを待つしかないぞ」
「オルキデア様のご迷惑になるのなら、それでも構いません。どんな扱いを受けても」
「アリーシャ……」
「ようやく、あの家を……国を出られたんです。父は体裁を保つ為に、私が屋敷から出て自立する事も、働きに行く事も禁じていました。
だから、私は父の迷惑にならないように……存在しないように、息を潜めて生きていくしかなかったんです」
アリーシャーーアリサがシュタルクヘルト家に居た頃、元王族の血を引く資産家の娘が、外に出て働くなど言語道断と、父は使用人を介して、アリサが市井で働く事を許してくれなかった。
家を出て一人で生きていきたいと言った事もあったが、家を出るなら、二度とシュタルクヘルトを名乗る事も許さず、生活に必要な支援もしないと、これも使用人を介して言われたのだった。
アリサは別に構わなかったが、アリサ付きの使用人がそれを止めてきた。
シュタルクヘルトの名を捨てて、家を出ても、シュタルクヘルトの国内はどこに行っても父の息がかかっており、生きづらいと。
ーーもし、一人で生きるなら、国外でなければならないとも。
「国外に出るなら、中立国であるハルモニアが無難だと思っていました。ハルモニアなら、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も通じるので」
シュタルクヘルトとペルフェクトのどちらにも与せずに、中立国を貫いているハルモニアなら、元王族の血を引くアリーシャでも亡命者として受け入れてくれるだろう。
「それなら、ハルモニアに連れて行こう。国に帰るのも、そこで生きるのも、好きに選ぶといい」
それならいいだろうと、オルキデアは言外に言ったが、アリーシャは納得しなかった。
ただ、嫌々というように首を振ったのだった。
「わ、私は……この国で、オルキデア様の側で生きていたいんです……」
「俺の? なんで、また……」
「オルキデア様の側に居る時が、一番心地良かったんです。……安心出来たんです」
「……俺は君を監視していたに過ぎないぞ」
オルキデアは眉を顰める。アリーシャに気に入られるような事を、自分はしただろうか。
「でも、私が最初に目を覚ました時も、薬を盛られた時も、薬を盛った犯人を捕まえる時も、ここに来る時も、オルキデア様は気にかけてくださいました。それが嬉しかったんです。……堪らなく。だから、それに報いたい。恩返しをしたいんです」
「あの時も言ったが、俺は、俺が保護した捕虜に責任を持っただけに過ぎない。
それに、君がただのシュタルクヘルト人じゃないって、最初から気付いていたからな」