アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
オルキデアが士官学校に入学した十六歳の春。
ティシュトリアがラナンキュラスの名を使って、勝手に肩代わりした借金の取り立てが、屋敷にやって来た。
平民とも関係を持つようになったティシュトリアは、彼らが持っている借金の肩代わりをして、決して少なくはなかったラナンキュラス家の屋敷の財産を食い尽くそうとしてきた。
その知らせを受けたオルキデアが、全寮制の士官学校の宿舎を抜け出して、屋敷に戻って来た頃には、落ち込む父のエラフと途方に暮れる使用人以外、ほぼ何も残っていなかった。
「父上……」
「大丈夫だ。オルキデア。大丈夫だからな……」
ソファーに座って肩を落としていたエラフは、力ない笑みをオルキデアに向けたのだった。
実際に、オルキデアが士官学校を卒業する間に、エラフは屋敷のみ取り返した。
だがその間も、ティシュトリアはラナンキュラスの財産を食い続けた。
エラフは懇意で屋敷に残ってくれた使用人たちから、ティシュトリアとの離縁を何度も勧められた。
けれども、エラフはティシュトリアと縁を切ろうとしなかった。
父の代から続く、ティシュトリアとの生家との絆ーーエラフの死後、それは切れたが。を守りたかったのか。
それとも、ティシュトリアがこうなった責任を負っているつもりなのか。
オルキデアはとうとう分からないままだった。
その後、エラフは心労がたたって、亡くなった。
オルキデアが士官学校を卒業して、新兵として配属された二十歳の時だった。
屋敷を取り返す為に、無理をして働き続けた結果、身体を壊したのだ。
それでも無理して働き続けた結果、職場で倒れて、そのまま帰らぬ人となった。
葬儀はオルキデアと屋敷に残っていた使用人、父の知り合いたちで取り行った。
けれども、ティシュトリアは遣いを出しただけで、エラフの死に顔さえ見に来なかった。
最後にティシュトリアに会ったのは、オルキデアが士官学校を卒業した日ーーエラフが亡くなる数ヶ月前であった。
下町の酒場で、クシャースラら同期と飲んだ帰り。
下町に住んでいると思しき男と腕を組んで、歩いていたのだった。
この時、ティシュトリアと何か言葉を交わした気がするが、酒も入っていた事もあって、何も覚えていなかった。
それから、父が亡くなって二年後。
二十二歳になったオルキデアは、戦争の最前線である北部基地に配属される事になった。
その際に、使用人を全員解雇した。
屋敷を手放して、軍部の近くに別の屋敷を購入し、その屋敷の管理をコーンウォール家に託した。
コーンウォール家は、クシャースラの妻であるセシリアの実家であり、セシリアの父はオルキデアの父と懇意の中であり、昔から何かとオルキデアを心配してくれた。
セシリアとセシリアの母、セシリアの二人の弟も、父の葬儀の際に手伝ってくれた。
コーンウォール家なら、屋敷を悪用しないだろう。
そうして、オルキデアは北部基地に向かった。
以来、ほとんど屋敷には帰っていない。
ティシュトリアがオルキデアの元を訪ねて来た事も、無かったのだったーー。
ティシュトリアがラナンキュラスの名を使って、勝手に肩代わりした借金の取り立てが、屋敷にやって来た。
平民とも関係を持つようになったティシュトリアは、彼らが持っている借金の肩代わりをして、決して少なくはなかったラナンキュラス家の屋敷の財産を食い尽くそうとしてきた。
その知らせを受けたオルキデアが、全寮制の士官学校の宿舎を抜け出して、屋敷に戻って来た頃には、落ち込む父のエラフと途方に暮れる使用人以外、ほぼ何も残っていなかった。
「父上……」
「大丈夫だ。オルキデア。大丈夫だからな……」
ソファーに座って肩を落としていたエラフは、力ない笑みをオルキデアに向けたのだった。
実際に、オルキデアが士官学校を卒業する間に、エラフは屋敷のみ取り返した。
だがその間も、ティシュトリアはラナンキュラスの財産を食い続けた。
エラフは懇意で屋敷に残ってくれた使用人たちから、ティシュトリアとの離縁を何度も勧められた。
けれども、エラフはティシュトリアと縁を切ろうとしなかった。
父の代から続く、ティシュトリアとの生家との絆ーーエラフの死後、それは切れたが。を守りたかったのか。
それとも、ティシュトリアがこうなった責任を負っているつもりなのか。
オルキデアはとうとう分からないままだった。
その後、エラフは心労がたたって、亡くなった。
オルキデアが士官学校を卒業して、新兵として配属された二十歳の時だった。
屋敷を取り返す為に、無理をして働き続けた結果、身体を壊したのだ。
それでも無理して働き続けた結果、職場で倒れて、そのまま帰らぬ人となった。
葬儀はオルキデアと屋敷に残っていた使用人、父の知り合いたちで取り行った。
けれども、ティシュトリアは遣いを出しただけで、エラフの死に顔さえ見に来なかった。
最後にティシュトリアに会ったのは、オルキデアが士官学校を卒業した日ーーエラフが亡くなる数ヶ月前であった。
下町の酒場で、クシャースラら同期と飲んだ帰り。
下町に住んでいると思しき男と腕を組んで、歩いていたのだった。
この時、ティシュトリアと何か言葉を交わした気がするが、酒も入っていた事もあって、何も覚えていなかった。
それから、父が亡くなって二年後。
二十二歳になったオルキデアは、戦争の最前線である北部基地に配属される事になった。
その際に、使用人を全員解雇した。
屋敷を手放して、軍部の近くに別の屋敷を購入し、その屋敷の管理をコーンウォール家に託した。
コーンウォール家は、クシャースラの妻であるセシリアの実家であり、セシリアの父はオルキデアの父と懇意の中であり、昔から何かとオルキデアを心配してくれた。
セシリアとセシリアの母、セシリアの二人の弟も、父の葬儀の際に手伝ってくれた。
コーンウォール家なら、屋敷を悪用しないだろう。
そうして、オルキデアは北部基地に向かった。
以来、ほとんど屋敷には帰っていない。
ティシュトリアがオルキデアの元を訪ねて来た事も、無かったのだったーー。