アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
アリーシャ【下】
クシャースラが帰り、空になったカップを片付けているアリーシャを、オルキデアは呼び止める。
「話しがある。片付けは後でいいから、ソファーに座ってくれないか?」
先程までクシャースラが座っていた場所にアリーシャが座ると、オルキデアはまだアリーシャに渡していなかったもう一通の封筒から書類を出す。
「これって……婚姻届ですか?」
「偽の経歴書と一緒に持って来てもらった。後は君のサインだけだ」
先程、アリーシャがテーブルを片付けている間に、オルキデアは自身のサインを済ませていた。
後はアリーシャにサインを書いてもらい、国に提出するだけであった。
「わかりました。この空欄に記入すればいいんですね?」
「ああ。そうだ。偽の経歴書を見ながら書いてくれるか」
オルキデアがペンを手渡すと、アリーシャはスラスラと空欄を埋めていった。
その迷いのない記入に若干の不安を覚えつつ、アリーシャの流暢なペルフェクト語の文字を見ていると、「あの……」と声を掛けられる。
「生年月日なんですが、ペルフェクト暦とシュタルクヘルト暦で数え方が違うので教えて欲しいんですが……」
「そうだったな。すっかり忘れていた。互いに独自の数え方をしていたな」
ペルフェクト、シュタルクヘルト、そしてハルモニア。
国ごとに暦の数え方が違っていたのをオルキデアはすっかり忘れていた。
偽の経歴書には、両国の暦の対比を書いていなかったからアリーシャも分からなかったのだろう。
「誕生日はいいんですが、私は何年に生まれたことにしたらいいのでしょうか?」
「そうだな……。調べるから、君の年齢を教えてもらえるか?」
「二十二です」
「若いな……。俺とは五歳違いか」
「若いって、オルキデア様もまだまだ若いです」
執務机の端末で調べながら、呟くオルキデアにアリーシャが返す。
「二十二だと……。ペルフェクト暦一九九七年だな」
「ありがとうございます。この国で生きていく以上、そういうのも覚えないといけないですね……」
そうして、アリーシャは記入を終えると、再度、確認をしてからペンを置く。
「書けました」
アリーシャから書類を受け取って、ざっと読むと封筒にしまう。
「問題なさそうだな。では、婚姻届はこちらで出しておく」
執務机の引き出しの中に仕舞うと、ソファーから立ち上がろうとするアリーシャを呼び止める。
「先程の話だが、学校に行ったことが無いとは聞いていなかった。シュタルクヘルトは識字率が高く、身分に関係なく教育を受けられると聞いていたが違うのか?」
そもそも、シュタルクヘルトには身分制度は無いので、貧富の差と言うべきだろうか。
アリーシャはソファーに座り直すと、「違ってないです」と返した。
「普通なら……戸籍があれば、十六歳までは貧富の差に関係なく、誰でも学校に通えます。でも、私は普通じゃないので……」
アリーシャは悲しげに笑ったのだった。
「話しがある。片付けは後でいいから、ソファーに座ってくれないか?」
先程までクシャースラが座っていた場所にアリーシャが座ると、オルキデアはまだアリーシャに渡していなかったもう一通の封筒から書類を出す。
「これって……婚姻届ですか?」
「偽の経歴書と一緒に持って来てもらった。後は君のサインだけだ」
先程、アリーシャがテーブルを片付けている間に、オルキデアは自身のサインを済ませていた。
後はアリーシャにサインを書いてもらい、国に提出するだけであった。
「わかりました。この空欄に記入すればいいんですね?」
「ああ。そうだ。偽の経歴書を見ながら書いてくれるか」
オルキデアがペンを手渡すと、アリーシャはスラスラと空欄を埋めていった。
その迷いのない記入に若干の不安を覚えつつ、アリーシャの流暢なペルフェクト語の文字を見ていると、「あの……」と声を掛けられる。
「生年月日なんですが、ペルフェクト暦とシュタルクヘルト暦で数え方が違うので教えて欲しいんですが……」
「そうだったな。すっかり忘れていた。互いに独自の数え方をしていたな」
ペルフェクト、シュタルクヘルト、そしてハルモニア。
国ごとに暦の数え方が違っていたのをオルキデアはすっかり忘れていた。
偽の経歴書には、両国の暦の対比を書いていなかったからアリーシャも分からなかったのだろう。
「誕生日はいいんですが、私は何年に生まれたことにしたらいいのでしょうか?」
「そうだな……。調べるから、君の年齢を教えてもらえるか?」
「二十二です」
「若いな……。俺とは五歳違いか」
「若いって、オルキデア様もまだまだ若いです」
執務机の端末で調べながら、呟くオルキデアにアリーシャが返す。
「二十二だと……。ペルフェクト暦一九九七年だな」
「ありがとうございます。この国で生きていく以上、そういうのも覚えないといけないですね……」
そうして、アリーシャは記入を終えると、再度、確認をしてからペンを置く。
「書けました」
アリーシャから書類を受け取って、ざっと読むと封筒にしまう。
「問題なさそうだな。では、婚姻届はこちらで出しておく」
執務机の引き出しの中に仕舞うと、ソファーから立ち上がろうとするアリーシャを呼び止める。
「先程の話だが、学校に行ったことが無いとは聞いていなかった。シュタルクヘルトは識字率が高く、身分に関係なく教育を受けられると聞いていたが違うのか?」
そもそも、シュタルクヘルトには身分制度は無いので、貧富の差と言うべきだろうか。
アリーシャはソファーに座り直すと、「違ってないです」と返した。
「普通なら……戸籍があれば、十六歳までは貧富の差に関係なく、誰でも学校に通えます。でも、私は普通じゃないので……」
アリーシャは悲しげに笑ったのだった。