泣いてる君に恋した世界で、
プロローグ
俺は、この世界を一時憎んだことがある。
いや、俺自身 “を” かもしれない。
大切な人が2年連続で3人も失ったから。
親友を失い、同年には親父を。
そして翌年、母が突然亡くなった。
俺の人生は親父が死んでから、ほとんど母さんに捧げていったといっても過言ではないくらいだ。言っとくけどマザコンではない。
ただ亡くなる前、俺は3人と一瞬仲が悪くなった。俗にいう喧嘩別れってやつに当てはまるだろう。
そのこともあってから、3人が死んだのは全て俺のせいだとあの日に悟った。
もう全てがどうでもよく思えて、絶望的になった俺はまだ幼い妹がいるのに『死にたい』『消えたい』と思い願った。
最低な兄だ。
そんな俺に容赦なく照らす夕陽は心底鬱陶しくて、その瞬間にこのオレンジ色に染まった世界を憎んだ。
まさに、今、目の前に広がっている景色がそれ。
でも今ある夕陽は温かくて、愛おしい。そして懐かしい。
その光に目を細める。
―――なぁ、咲陽。咲陽にはこの景色どう見えてる? 俺には眩しすぎる。目を開けていられないほどに。綺麗なオレンジだけれど。
きっと咲陽には色んな色で見えてるんだよな。知ってる。そして当たり前のようにスケッチブックと色鉛筆、水彩なんかを自分の周りに広げて描いていくんだ。
真剣で、尚且つ楽しげに微笑みながら。
そうだろ? 咲陽。