泣いてる君に恋した世界で、
「おにぃ」
小さな声に寝返りを打つ。
「ぃかないで……ひとりにしないで……」
声は寝ながらでも震えてた。
抱きしめた。小さなからだを。
間近で見た彼女は眉間に皺を寄せていたが、しばらくするとそれは解けてきて安心した顔を見せた。
目尻に溜まった雫を取り払い、もう一度優しく包み込む。
すると、すりすりと胸に顔を埋めてきた。
無意識なのだろうけど、可愛すぎだ。
頭を撫でた俺の表情はきっと世界一緩んでいたと思う。
時計はあっという間に朝を迎えようとしていた。
とんだクリスマスだった、と今更思った。
母さんの最期の手料理。美味かったなぁ……。
羽星には俺のビビりはバレバレだったみたいだし。
これからの事はまだ分からない。
けれど、笑顔だけは絶やさないようにしていきたい。せめて羽星だけでも。
「こんな兄ちゃんだけど、羽星のことずっと守っていくから。悲しませないから。頑張っていこうな」