泣いてる君に恋した世界で、
「……はあ最悪」
「でもこの人凄くいい表情してる」
「そうだけど……ってそういうことじゃねーし。もう俺やだ……」
「ねえ、この時なに考えてたの?」
撃沈しているのに容赦なく質問してくる彼女。もうちょっと配慮とかないの?様子をみるとかさ。これ以上思い出させないでくれよ恥ずか死ぬ。
「ねえ、なに考えてたの?」
「……別に何も」
「ふーん。写真撮ってそれ見て満足してたのに? 落ちた桜だって楽しそうに撮ってたのに? 空なんか見上げてさ、こんなに楽しげに微笑んでる人お年寄りぐらいだよ。ずっと楽しそうだったよ?」
その後急に暗くなったけど。とサラリと重ねて言われたけれど、それに関しては何一つ追求されなかった。
てか、お年寄りって……。
お年寄りがみんなして微笑みながら空見上げてるなんてさぞ幸せで平和な世界じゃん。
俺はそんなんじゃない。あれは一種の現実逃避だ。
「あ!分かった。今日の夜ご飯なんだろな〜 的なこと考えてたでしょ」
「そんなんで空見上げるか。違うし」
「えっ、見上げないの? 私はよくする。空見てると色んな事やモノが見えるんだもん。雲って誘惑よねぇ……」
「やっぱ自分の事じゃん。俺が空を見上げる時は―――」
『天国にいる3人に話しかけてる時だよ』
そんな台詞を遮った予鈴に感謝した。
教室から出てここまであっという間だったな、と黒板の上にある時計を見て思う。
彼女は慌てる様子もなく未だに俺がいるスケッチブックを眺めている。
慌てていないってことは次の授業美術室なんだろうか。
俺は理科室で実験。なので少し急がないと。
「じゃ、俺次移動教室だから」
「あ、うん。じゃあね」
そう言って手を振る彼女はなんだかさっきまでのハツラツとした雰囲気はなくて、切なげだった。
俺の錯覚だろうけど、差し込んだ日差しが彼女を照らしていてそのまま包み込んでどこかへ連れて行ってしまいそうにみえた。
この切なげな表情も相まっているからそう見えてしまっただけだろうけど。
教室を小走りで目指しながら別れ際の彼女を思い出していると後ろから呼び止められた。