泣いてる君に恋した世界で、
5月半ばを過ぎた頃。中間テスト期間が終わった。
もう何も頑張る必要がないのにも関わらず、どの教科も上位で、学年では10番以内に俺がいた。
毎回謎なんだけど、校内に順位貼り出す必要ってあるの? まじ何のため? 『次も頑張ろう!』っていう向上心出させるため? それとも他人と比較するため? とにかく分からない。このシステム個人だけ公開でいいと思います先生方。
あともう一つ。
「槙田くん凄いね!どう勉強したらあんな順位取れるの?」
「やっぱ真面目なんだね」
「今度勉強教えて!」
「去年は学年2位だったもんね!」
ねえ、俺の周りにクラスの女子が群がっているのなぜ? うるさいし、帰りの邪魔なんですけど正直……。
軽く遇いながらなんとか教室を抜け出すことができて一息つく。
別に女子に対してトラウマなんてものは持っていないけれど、急に話しかけてくるのは怖すぎ。これまであの中にいた人全く声掛けてくるやついなかったじゃん。1人を除いては。
「――槙田くん!」
「月影さん」
豊かな声とともにトタタタと隣に来た月影さんは息を整えながら「暑いねぇ」と笑う。襟元を摘んでパタパタと風を入れる仕草になんとなく鼓動が速くなった。
「ごめんねさっきは」
「あーまあ、別に。なんか急に囲まれたから何事かと思ったけど」
「あはっ。だよねぇ。みんな急に態度変わりすぎだし。槙田くん頭良いの知らない方がおかしいっていうか……っ」
テンポがよかった言葉は急激に速度を遅めて濁らせると笑顔から青ざめた表情へと変わった。
その意味に全く気付かない俺は適当に相づちを打って逆に質問した。
「なんで急に女子が群がったと思う?」
「ふはっ、 “群がった” って。あははっ、槙田くんのワードセンスっ」
「あ、ごめん。使い方違ったか」
「いやそーじゃないけど、あはは!ごめ、なんかツボったあははは! ――えとねぇ、多分だけど、槙田くん自身の問題だと思うよ?」
「え、俺?」
タンタンタン、と1階に続くフロアを下りきった月影さんはほんの少し遅れて彼女の隣に並んだ俺を見上げてニッと笑った。
気付いてないの? と言わんばかりの視線がなんかくすぐったくてぎこちなく逸らす。
俺自身の問題? どういう事? なんかしたっけ?