泣いてる君に恋した世界で、


何とか “カノジョ” の話題から脱出することが出来た。時間もあっという間に過ぎて、今は夜だ。21時半過ぎたとこか。


カメラロールを開き重複した写真を削除するという大掛かりな作業に取り組んでいるところだが、一向に進まない。

どれも残したいくらいの料理姿の妹に泣く泣くお別れする俺は重度のシスコンだろう。


否定はしないが、羽星がいなかったら俺は多分この世にはいなかったかもしれない。たった1人の妹。家族。その存在はとても大きい。


だいぶ量が減ってきたところで、ふと思い立ち、LINEを開く。トーク一覧の一番上には望月がいる。

以前、妹の話をしたことがあった際に『会ってみたい』と言っていたのを思い出し、迷わず開いて1枚の写真を送った。

基本この時間帯はもう就寝していると聞いていたので返信は翌日だろうと思った矢先に、スポンと即レスが来た。


予想外の返信にスマホが手のひらで踊る。

 


【かわいい!妹さんだよね?
 やっと見れたんだねヽ(´▽`)/】

[そ]
[どれもうまかった]

【もちろん料理も撮ったんでしょ?
 見せて〜】

[当たり前じゃん。いいよ]




そして貼り付けた。一番得意とする味噌汁と卵焼きを。我ながら今までで一番上手く撮れた気がする。ブレてないし。画像も鮮明だ。





【妹さん凄いね。
 クオリティ高くない!?】
【私も食べたいなあ笑】

[高い]
[包丁さばきプロ並み]
 
【絶対美味しいもん!間違いない
 写真だけじゃ物足りない!】
【見てみたいなあ妹さんの包丁さばき】
【なんなら家のキッチン貸すから
 私になんか作って欲しい(笑)】

[物足りないって笑]
[何食べたいの]

【卵焼き!】
【私の大好物なの】





そう知るともしかしてと確信めいたことを思いついた。




[卵料理全般好きだったりする?]

【というか卵料理全般好きなんだよね】





ほぼ同時だった。

言い方が違うだけで言う内容は一緒なことに不思議と笑みが浮かぶ。そして『もしかして』が大正解だった事に嬉しみを感じた。




[てか俺の弁当に入ってる卵焼きあげるよ]
[ほぼ毎日あるから]





そう送るとしばらく間ができた。かれこれ10分は経っている。既読は付いている。

寝落ちか?
まあ、時間帯はもう寝ている頃だし。俺が望月を無理矢理起こしてしまったようなもんだからな。もっと考えて送るべきだった。

寝ようとしてたところ起こしてごめん。


罪悪感を抱きながら “おやすみ” の文字を打とうとしたところで返信がきた。


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