未来の種
教頭に挨拶を済ませて許可をとった私は、幼稚園に意気揚々と帰って行った。

主任教諭もホッとしたようで、早速、発信する動画を撮る準備に取り掛かった。と言っても、スマホを三脚に固定するだけ。これで手ブレはなくなるはずだから。

幼稚園の先生と言っても、皆がピアノ好きなわけではない。実は簡単な童謡しか弾けない先生もいたりする。そういうわけで、伴奏は私が担当することになった。

歌唱担当の先生、体操・ダンス担当の先生、手遊び歌担任の先生。それぞれの担当を決める。

子供達、楽しんでくれるかな？

緊急事態ではあるのだけれど、どの先生も、ワクワクしながら協力しあって撮影をする。
皆んなこの仕事が大好きだから。少しでも園児のために何かしたい、と考えているのがわかる。


乾先生が幼稚園に来たのは、16時を回った頃だった。高等部での仕事を最優先で、と言うのが教頭の条件だったので、遅くなっても待たなければいけない。
本来ならする必要のない残業なんだから。

私が学校の目の前に住んでいることは皆知っている。だから、主任教諭から許可を得て、私が乾先生からレクチャーを受ける事を引き受け、他の先生方には帰ってもらうことにした。

1人で覚えなければいけないのは責任重大だけど、頑張ろう。




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