未来の種
過去からの訪問者
横断歩道を渡って、クリニックの横の通路を奥に進む。いつもなら、クリニックに寄って、父の顔を見てから上に上がるところだけど、今日は私の方が遅かったみたいだ。
通勤時間、徒歩30秒…もかからない。ホント、恵まれた通勤環境だ。その分、公親くんに言われたように、男性がここへ立ち寄るにはハードルが高いのだろうと思う。
…父の思惑通りだな。
オートロックを解除して、エントランスに入り、エレベーターのボタンを押したところで、後ろに人がいることに気づいた。ここは8階建ての全部で5戸しかないマンションだ。各フロアに1戸。私以外は皆さん家族で住んでいて、全員顔見知り。挨拶をしようと振り返る。
「こんばんは……えっ⁉︎ 」
そこにいたのは背の高い、若い男の人。
「そばにいてくれる人って、公親だったの?」
「ゆ、優⁉︎ 」
どうしてここに居るの?
ついさっきまで公親くんと優のことを話してた。そんなタイミングで、アメリカにいるはずの優が現れるなんて…