未来の種
「遠距離は無理って……
そもそも、お前、留学を決める前に、今後のことは話し合っていたのか? 
何年を目処に帰る予定だとか、帰ったらどうするか。結婚しよう、とか…。」

「…‼︎
お、俺、言うつもりだったよ。
美衣子以外の誰とも結婚するつもりないし。」

「…言ってないんだな。」

「美衣子はずっと応援してくれてたし、待ってくれるものだと思ってた…」

「お前! 俺の妹を何だと思ってるんだ⁉︎
何の約束もせず、待たせるつもりだったのか? 最低だな!」

「しょ、昇ちゃん!
お、俺…俺、どうしよう…?
美衣子、私じゃない誰かと幸せになってって。
そんなこと言われても、他の女なんて考えられないよ!」

「『私じゃない誰かと幸せになって』……そう言ったのか?」

「うん………言った。」

「今週末、美衣子のところへ行ってみる。
けど、お前は反省しとけ。海よりも深くな!
本当に愛想尽かされたのかもな。」

「昇ちゃん⁉︎」

「……また連絡する。」

そう言ってブチッと切られた。

俺が嫉妬するほど仲のいい兄妹だ。昇平の怒りはもっともだった。大切な妹を蔑ろにしていたと思われても仕方ない。

俺は、なんで「待っててほしい」の一言も言わなかったんだ? 別れを切り出されるまで気付かないなんて…。どんだけ間抜けなんだよ! 

過去に戻れるなら、何度だって言うよ。
待ってて欲しい。
美衣子以外はいらない。
愛してる。
そして、帰ったら結婚しよう! って。

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