未来の種
「仕事…。
優、お前ピアノはいいのか? NYに留学までしてピアノ、頑張ってたんじゃないのか? 
この前のコンクールでも良い成績だったんだろう?」

「いいんだ。こっちでも、コンサートは軒並み中止。今は音楽家も活躍の場がないんだ。
それに俺、日本に帰ったら、地に足をつけた生活をするつもりだから。ちゃんと職を持って、生活したい。」

「……そうか。決心したんだな。
私に言ってくるということは、教師で探してるのか?」

「うん。教職取ってたのは知ってるでしょう? 教育実習に行かせてもらったから。
非常勤でも、産休代行でもなんでもいいよ。
小学部じゃなくてもいい。どこの学部でもいいから。」

「……ない事はないんだけどな。産休代行というか…。
新婚の音楽の先生が、妊娠したんだけどな、切迫流産で入院して、そのまま大事を取って辞表を提出してきた。2週間前のことだ。」

「ほ、本当⁉︎ それ、俺が出来ないかな?」

「それが…昨日代行が決まったんだ。」

「そっか…。一足遅かったかー。」

「だが…なんとかならなくもない。」

「え?……でも決まったんでしょう?」

「いや…代行は愛なんだ。」

「叔母さん⁉︎ え、幼稚園があるんじゃないの?」
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