未来の種
甘い時
「教師だよ。」

『優はこれからどうするの?』と言う私の問いかけに意外な答えが返ってきた。

「伯父さんに連絡して、小学部の音楽教師をさせてもらえることになった。」

「えぇ⁉︎ それって愛先生が産休代行で引き受けたんじゃなかった?」

「まあ…そうなんだけど、叔母さんも積極的に引き受けたわけではないみたいで、電話したら逆に喜んでもらえたよ。
それに俺は正職員として入るから。」

「そうなんだ! 優も先生になるんだね。
じゃあここに住む? 
通勤時間30秒だよ?」

「藤田先生に挨拶に行ってからだよな…。
でも住ませてもらえるとありがたいな。
ちゃんと家賃は入れるから。」

「あ、でも…ひとつ問題が…。」

「なに?」

「ここ、ピアノがないの。
この電子ピアノじゃ、優には物足りないでしょう? 
アップライトなら置く場所はあるけど、ここの壁は防音じゃないから、夜は弾けないのよ。」

ここにあるのは、電子ピアノとしてはかなり良いものなんだけど、ピアニストの優には、オモチャのようなものだと思う。

「別に、これで良いよ。
これなら音の調整が出来るんだろう? 
電子ピアノって使ったことないんだけど…。」

そう言って電源を入れ、メロディーを奏で始めた。

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