色のない世界に恋のうたを

『どうぞ、』
「ありがとう」

中に入ってすぐに備品を見つけた。
でもすぐに戻りたくなくて、何となく探すふりを続ける。

『なぁ、』
「ん?」
『本当に痩せてない?』
「…なんで、」
『細すぎ。あんなに食べるの好きだったのに』
「…誰のせいだと、」
『ん?』
「誰のせいだと思ってるの」
『…風華、』

呼び捨てでなんて、今は呼ばないで欲しかった。

「この数ヶ月間ずっと、別れる前のこと考えてた。 私の言動、行動全て直せてたら私はまだ流星と上手くやれてたかなって。 どうすれば流星が、あの時あんな言葉言わなかったかなって…」

私はあなた無しでは、彩りなんてないつまらない世界になってしまうと気づいた。

『…俺、今もずっと縛り続けてるんだな、風華の事』
「……ちが、」
『ごめんな。こんな男で。風華にはもっとまともな奴が現れる』
「流星、!」
『大丈夫。お前はいい女だから。焦らずとも素敵な彼氏ができるよ』
「ねぇ待って、」
『鍵、ここ置いとくから』

お疲れ。
そう言ってはにかみ倉庫を後にする流星。
私の心は砕かれた。
私はただ、私の元に流星が戻ってきて欲しかっただけなの。
ねぇ、流星。
もっと私を縛って、愛してよ。
もう一度だけ、私を好きだと言って。

目から零れる雫は、まるで砕かれた破片が飛び散ったかのようだった。
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