色のない世界に恋のうたを
ほら、こういう時だっていつもサラッと欲しい言葉をかけてくれるんだ。
魔法使いみたいな彼の能力に、結局私はまた甘えてしまっている。
『俺じゃ信用出来ひん?』
「ううん、直樹の事ずっと信頼してる」
『ほんま?』
「約束する」
『…じゃあさ、
俺、前世の記憶あんねんって言ったら史瀬は信じてくれる?』
「…え?」
突然突拍子もないことを言い出す彼に、声が出なかった。
でも、長年の付き合いで分かることがある。
ジョークを言う時にしては、声のトーンが落ち着きすぎているということ。
「…ほんと、なんだ」
『別に史瀬にも、誰にも言うつもり無かってん。 変な人やと思われるんも嫌やし。 でも、初めて人に、史瀬に、話したいって思ってん』
話してもええ?と私の目を見て聞いてくる彼に、私は黙って頷いた。
彼はコーヒーの入ったマグカップと私を連れてソファに座る。
『俺の前世は、平安時代の天皇やった』
「…天皇、」
『信じられへんよな。前世の俺が死んだんは1164年。 そっからもう1000年近く経ってんねん』
彼は新しく入れたコーヒーを、1口飲む。
『崇徳院って名前やった。 父親と祖父の権力争いのコマに使われるように生まれてきたんが俺やった。 祖父の言いなりになって、父親には恨まれて騙されて。 政治の権力もなかったし、父親が亡くなった頃には崇徳院が謀反を起こす計画を立ててるなんて噂が流れて、戦をせざるを得ない状況にまでなった』
「戦………、直樹の前世の人は勝ったの?」