色のない世界に恋のうたを
何かを言いたげな眼差しで私を見つめる。
彼は私にゆっくりと近づき、抱き寄せた。
さっき人質になった時とは違い、抱きしめ方は優しかった。
『俺にとってお前は特別なんだ』
「…紫ノ宮?」
『昔から同期としてライバルとして、バディとして。
…そして女として。ずっとずっと特別なんだ。 俺はできる限りお前を守ってきた。 お前にはいてもらわなきゃ困る。 怪我をされたり無理するのだって本当は嫌なんだ。 だって俺は…』
「待って紫ノ宮!
…仕事に私情は禁物だから」
『…ごめん』
「でもありがと。私も大事なもの見失ってた」
『うん、』
「今日、空いてる?」
『おう』
「飲みに行こう、その時またこの話の続きをしよう」
『わかった』
助けてくれてありがとうの気持ちを込めて、紫ノ宮の背中に手を回し抱きしめ返した。
私も紫ノ宮が特別だった。
紫ノ宮を守るためなら命なんて惜しくないと思ってた。
でも、もう今は違う。
彼がいてくれるからこそ、彼の傍で1日も長く生きていようと思えるんだ。