色のない世界に恋のうたを
するとスマホが揺れながら軽快なリズムを刻む。
着信だった。
相手は、
「大地」
『うぉー、もしもし言わねぇタイプなのね笑』
「あ、もしもし」
『ふは、おっせぇ笑』
1番会いたい人だった。
『ぼーっとしてる俺の彼女が可哀想だなって』
「いいですねぇ楽しい趣味があって」
『俺漫画とかアニメとか見すぎて視力落ちそう』
「ふふ、小学生じゃん」
『有紗は何してたの?ぼーっとしてただけ?』
「んー、私はねぇ。月見てた」
本当は月見ながら大地が魔法でここに来ないかなって願ってたんだよ。
『月か。確かに今日は満月に近いね』
「少し欠けてるよ。明後日が満月」
『詳しいね』
「最近毎日見てるから何となくわかるんだ」
へぇ、すげぇって感心する大地。
その後ほんの少しの沈黙があった。
『…なぁ、会いに行っちゃダメ?』
「え、?」
『もう限界。俺会わなすぎて死んじゃいそうだから急を要するんだけど…』
なぁんだ、大地と同じ思いだったんだ。
「…私も、会いたい」
『じゃあ、今から行くね?』
「え、今から?今深夜じゃん」
『大丈夫、すぐ行く』