この世界の魔王はツンでクールな銀髪美少年だ
本編
私の名前は葉山莉乃。
現代日本の小さな会社で事務員をしていた23歳だ。
学生時代の友人たちがチラホラ結婚を決め始め、自分も婚カツをせねばと焦りだした時にピエレオスに聖女として召喚された。
この世界に召喚されたあの日。
人生で初めての合コンに挑むはずだったあの日。
二時間後に控えた合コンのために気合いを入れてマスカラを塗っていたあの日。
絶対に合コン相手には見せられない目のかっぴらき具合で真剣にまつ毛を盛る私を鏡の中から喚ぶ声がした。
三年前に一人暮らしを始める時に買ったドレッサー。
その鏡面から、私を喚ぶ声がする。
「この鏡、中にスピーカーでも入ってるんだっけ?」
そう思って鏡に触れた瞬間。
私の周りの景色がグニャリと歪み白く発光した。
そのあまりの眩しさに瞼を閉じて、次に開けた時には私はもう自分の家にいなかった。
あー。子供の頃お兄ちゃんとやったRPGのお城とやらがこんな感じだったわ。
きんきら金の王様の椅子に、それに座る髭の王様。両脇に控える甲冑の兵士。ハゲ頭の大臣。青いローブの神官。赤い絨毯とシャンデリア。ゲーム画面で見たことのある光景にそっくりだ。そしてその絨毯の真ん中にマスカラを握りしめて立つ私。
あれ、私、いつの間にかコスプレの撮影スタジオに紛れ込んじゃった?
「よくぞピエレオスに参られた! 異世界の聖女よ!」
白く長い眉毛で目元が見えない神官(※推定)が高らかに告げてイベントが始まる。
ちょ、まっ、私、まだ片方しかマスカラ塗ってないんですけどっ!
──などと大勢の初対面の人間の中で突っ込めるはずもなく。
私はまつ毛を片方だけ盛ったままの状態で自分がこの世界に喚ばれた理由、魔族が如何に人間へ悪影響を与えているか等の説明を受けたのだった。
……うん、服と髪型はバッチリ合コン仕様だったのが救いかな!
現代日本の小さな会社で事務員をしていた23歳だ。
学生時代の友人たちがチラホラ結婚を決め始め、自分も婚カツをせねばと焦りだした時にピエレオスに聖女として召喚された。
この世界に召喚されたあの日。
人生で初めての合コンに挑むはずだったあの日。
二時間後に控えた合コンのために気合いを入れてマスカラを塗っていたあの日。
絶対に合コン相手には見せられない目のかっぴらき具合で真剣にまつ毛を盛る私を鏡の中から喚ぶ声がした。
三年前に一人暮らしを始める時に買ったドレッサー。
その鏡面から、私を喚ぶ声がする。
「この鏡、中にスピーカーでも入ってるんだっけ?」
そう思って鏡に触れた瞬間。
私の周りの景色がグニャリと歪み白く発光した。
そのあまりの眩しさに瞼を閉じて、次に開けた時には私はもう自分の家にいなかった。
あー。子供の頃お兄ちゃんとやったRPGのお城とやらがこんな感じだったわ。
きんきら金の王様の椅子に、それに座る髭の王様。両脇に控える甲冑の兵士。ハゲ頭の大臣。青いローブの神官。赤い絨毯とシャンデリア。ゲーム画面で見たことのある光景にそっくりだ。そしてその絨毯の真ん中にマスカラを握りしめて立つ私。
あれ、私、いつの間にかコスプレの撮影スタジオに紛れ込んじゃった?
「よくぞピエレオスに参られた! 異世界の聖女よ!」
白く長い眉毛で目元が見えない神官(※推定)が高らかに告げてイベントが始まる。
ちょ、まっ、私、まだ片方しかマスカラ塗ってないんですけどっ!
──などと大勢の初対面の人間の中で突っ込めるはずもなく。
私はまつ毛を片方だけ盛ったままの状態で自分がこの世界に喚ばれた理由、魔族が如何に人間へ悪影響を与えているか等の説明を受けたのだった。
……うん、服と髪型はバッチリ合コン仕様だったのが救いかな!