すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 大翔ー



外来の診察を終えてから、俺は沙奈の病室へと向かった。



いつも、部屋の電気の明かりがついているはずなのに、今日はついていなかった。



俺は、急いで電気をつけベッドに座る沙奈の姿を確認すると、安堵のため息が漏れていた。



「沙奈、大丈夫か?」



俺の言葉に、沙奈の反応はなかった。



「沙奈!」



沙奈の肩に手を乗せると、沙奈は想像以上に驚き一瞬だけ体が強ばったのが分かった。



「ごめん。中々、返事が帰ってこなかったから心配で…。」




「大翔先生…。」



「何か、あったのか?」



俺は、沙奈の隣に腰を降ろした。



「何でもない。」



明らかに何でもないという表情ではない。



電気の光に照らされて、涙の跡がうっすらと見えたのが分かった。



暗い部屋で、1人で泣いていたのか?



尚更、1人で抱え込ませるわけにはいかない。



「何でもないっていう表情ではないだろう。


話してくれないか?」



こんなに切ない表情をした沙奈は、出会った頃から見ていなかった。



俺に見せていた笑顔は、本当の笑顔だったはずだから。



なんでもないと嘘の笑みを俺に向けたことは、きっと大きな問題をまた抱えているのだとすぐに感じた。



「先生には関係ないよ。



話した所で、どうにもできない。



それに、分かるはずない。


私の、気持ちなんか…。」



沙奈は俺から視線を外し、ベッドの中へ入ってしまった。



これは、放っておけることではない。


時間をかけていいことではない気がした。


「沙奈。」


俺は、沙奈の小さな手を優しく包み込んだ。



「俺は、沙奈の力になりたいんだ。


関係ないなんて、寂しいこと言うなよ。


前にも言っただろう?


沙奈の問題は、俺の問題でもある。


俺は、沙奈の悩みや苦しみに寄り添って解決出来るなら解決していきたいんだ。


背負ってる過去を、俺に半分分けてほしい。


一緒に背負って生きていこう。」




この言葉が、彼女に届くかどうかなんて分からない。



だけど、1人で悩ませたくなかった。



苦しませたくもなかった。



大切な人が、苦しい表情をしている事が何よりも1番辛い。


助けるなという方が無理がある。



沙奈は、悩みや辛いことを抱え込み隠すことに慣れていて、大人に近い感情のコントロールの仕方を幼い頃に身につけてしまった。



それが、いい方にも悪い方にも働いて自分を苦しめたりもする。



だけどな、自分を傷つけても何の解決にもならないんだ。



だから、自分にぶつけることだけはやめてほしい。



俺は、そんな沙奈を見てられないんだ。



何としてでも救ってやりたい。



この手で、この俺が。



最近は、やっと前を向いて歩き出していたのにな。



何かあると、またスタート地点まで戻されているような気がする。

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