すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
紫苑や、翔太から沙奈の過去の話を聞き少しずつ前を向いて歩くことが出来ていることを聞いていた。
もし、過去の事でまた沙奈がこんな状態になってしまったとしたら教えてほしい。
沙奈が、過去に負った心の傷は大きくて深く、その傷が癒えることも難しいだろう。
沙奈は、俺たちに手を煩わせたくないという思いと心配させたくないという気持ちから我慢することが多々ある。
沙奈の父親との過去が、きっとそうさせてしまって沙奈も必要以上に我慢強い子になってしまったんだよな。
それは、診察を始めてから沙奈と多くの時間を共に過ごしてきた中で分かったこと。
だからこそ、注意深く見守らないといつか沙奈自身が壊れてしまうんじゃないかと怖かった。
沙奈の抱えている大きな過去の問題は、俺が半分背負っていきたいのにな。
無理をするなと言っても、無理をしてしまうことはいつものこと。
俺や、紫苑。翔太に負担がかかると感じて、体調が悪いことも、自分に降りかかった災難でさえも無理矢理隠してしまう。
いつも、誰かの負担にならないようにと気を使っている沙奈。
だけど、沙奈自身の負ったものこそ負担が大きすぎるんじゃないのか?
1人で抱え込まなくていいんだよ。
自分の心の容量は決まっていて、きっと沙奈の心の容量はもう破裂寸前にいっぱいになっているような気がする。
1人でできることなんて、たかが知れている。
だから、俺達が沙奈の手をしっかりと繋ぎ支えていかなければならないんだ。
沙奈が壊れてしまわないように。
頑なに閉ざしていた心の扉を、徐々にだけど俺や紫苑達に開いて来てくれている。
それは本当に嬉しいこと。
だからこそ、それに応えて俺も沙奈と向き合っていきたい。
「沙奈?」
「もう、放っておいて!
私に、これ以上関わらないで!」
沙奈は、ベッド周りにあるものを投げつけていた。
体力もままらならないのに、歩くことさえも今は難しいのに、沙奈はふらつく足取りで病室から飛び出してしまった。
「沙奈!」
沙奈の動きを止めたのは、冨山さんだった。
沙奈は、完全に冷静ではなかったのに冨山さんが沙奈を抱きとめると沙奈は小さい子供のように泣いていた。
冨山さんは、俺の顔を見つめ
「何かあったんですか?」
そう言い、俺の返事を聞くこともなく冨山さんの腕の中で泣きじゃくる沙奈の小さな体を優しく撫でていた。
冨山さんは、沙奈を抱き誰もいない仮眠室へと連れて行った。